2013年2月国内劇場公開のアメリカ映画。
邦題の「世界にひとつのプレイブック」って、さっぱり意味がわからなくて今まで敬遠していました。
プレイブックなんていかにもつまらなそうだしって思ってたんだけど、意味を知らなかった僕がアホなだけで、プレイブックには「作戦図」って意味があるんですね。「作戦図」とか聞くとなんだかおもしろそうじゃん。
原題は「Silver Linings Playbook」っていいます。邦題と全然違うよ。
wikipedia でも、次のように内容や原題と無関係な邦題にちょっと批判的です。
原題は「逆境に立ち向かう指南書」という意味で米国内では比較的よく知られた慣用句であり、本作の主題を的確に表現したものである。しかし、邦題は原題や本編内容とは明らかに無関係で日本での作品の理解を混乱させている。(wikipedia から引用)
原題の意味がわかっても、だからなんだ?って思うかもしれませんが、僕はこの映画のテーマは「心の病からの自己復帰」なのだろうと思います。
そのための「作戦図」的なものが原題に込められた意味じゃないかと思うわけです。
作品中でもっとも劇的な変化を遂げているのは主人公パット(ブラッドリー・クーパー)です。
冒頭の精神科病棟での独り言と虚ろな表情、妻との関係の妄想、様々な怒りの衝動を爆発させるシーンや不用意な発言の数々などを経て、次第に変わっていく彼の様子をブラッドリー・クーパーが好演しています。
ブラッドリー・クーパーというと、個人的には「ハングオーバー」シリーズのフィル役やミッドナイト・ミート・トレインのレオン役が思い浮かんでいたのですが、これからはたぶんこのパットが真っ先に思い浮かぶでしょう。
そんなパットを突拍子もない発言や行動で振り回しながら、自身も夫の死を乗り越えられずにメンタルを病んでいるティファニーを演じたジェニファー・ローレンスは、この作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。
主演女優賞と言えば、映画のジャンルは違えど、先日ご紹介したばかりの「ミザリー」のキャシー・ベイツと同じ。
このジェニファー・ローレンスなんですが、最初に登場したシーンでは全然きれいじゃないし可愛くもないただのビッチだなって思ったんです。まあ、登場シーンがそういう設定なんで。
でも、彼女も作品中でどんどん変わっていきます。その表情はもとよりまとっている雰囲気まで魅力的に変わっていくからすごいです。その変化に惚れます。
この作品って取り扱っているテーマは重いものの、ジャンルとしてはラブコメなんですね。だから最終的にはパットとティファニーはデキちゃうんだろうなあと予想はするのですが、パットとティファニーが恋に落ちていくというシーンがないんですよ。
ティファニーは明らかにパットが好きなんだろうなあとはわかるのですが、パットの方は彼の起こした事件のせいで接近禁止令が出ている妻との復縁しか頭にない様子が終始描かれていますから。
彼女に半ば強制的に引きずり込まれて出場することになったダンス大会だって、その妻に対して、もう自分は躁鬱病を克服して健康になったんだというアピールをしたいがためだったんだし。
でもね、ダンス大会の後で「ああ、やっぱり...」ってがっかりシーンの後で、全てが明かされたときに感じたふんわりとした優しい気持ちを僕は当分忘れられそうにありません。その場面でのカタルシスのために、あえてそれまで色恋シーンを封印していたとしか思えない心憎い演出がかなりツボです。
こりゃダメだ人生終わってるって感じのパットが、ティファニーや家族、友人とともにその孤独と困難を乗り越えていく過程がとても素晴らしく描かれている上に、ちゃんとラブコメとしても成立している素晴らしい作品でした。
とてもそんな素晴らしい内容の作品とは思えない邦題で完全に損してますね。
でも、この映画はメンタルが弱っているときに観ると諸々ヤバいです。
僕は勝手にいろいろ想像したり自分のことに置き換えたりして、なんで泣いているのか自分でもわからないけど涙が止まらなくなって号泣とかありましたから。
そういう意味では、パットに感情移入してしまうことが多かったのですが、一見変わり者でとんでもないメンヘラビッチにしか見えないティファニーが見せる唐突な優しさやその隠された健気さにジーンとしたりもしてね。サインを見逃しちゃダメなんだよ。
この作品では、精神を病んでいる者の代表としてパットとティファニー、そしてパットの入院仲間のダニー(クリス・タッカー)が登場しますが、それ以外の登場人物もそれぞれの理由から心に傷を負い、悩み、苦しみ、ストレスを溜め込んでいるんだなあということに気づかされます。どこからが病んでいてどこまでが正常なのか...いろいろ考えさせられます。
それは、家庭問題であったり、親子関係の問題であったり、ギャンブルやフットボールへの過度の依存であったりね。
そして完璧でなくたっていいから、いつまでもしくじった過去に囚われていないで、それぞれの生き方でいいから前に進んでいくことが大切なんだよって勇気と希望を示してくれる作品でもあります。10点満点の5点で大はしゃぎしたっていいんです。
なんとなくギリギリなボカシで具体的なネタはバレてませんよね。
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