[ま]9月のタイはいつも雨 @kun_maa
9月の連休にタイに行こうと思った。
実現すればたぶん5年半ぶりのタイ。
今度はどこの町を訪れようかと思案するだけでワクワクが止まらない久しぶりの感覚。
過去の記憶にほんの少し浸るだけであっという間に僕を包み込む市場の喧騒や寺院の穏やかな空気、広がるメコンの滔々たる流れ路地の猥雑なネオン。
クラフトビールにハマってからというものすっかり忘れていたタイへの想いが蘇る。
ちょうど9月の連休の頃、けやきひろばビールまつりや Mikkeller のイベントなどがあってクラフトビール好きでビール仕事のお手伝いもしたい僕には外せないところ。
それでももうタイに行きたくなってしまったらダメだビールどころではない。
ビールはタイで飲めばいいじゃん!とっても行きタイのである。
行く気満々で鼻息も荒く飛行機のチケットをポチろうという段になって天気のことが気になった。
9月がタイの雨季でしかも年間で一番降雨量が多いことは知識として知ってはいたが、実際のところはどうだったかなって。
こういう時はGoogleさんだ。
僕は9月のタイの天候について語られている記事をいくつか読んだがやはりデータ通り雨が多いらしい。
そして何かが引っかかる。
僕は毎日雨が降るタイにいたことが何度かあるはずだ...あれは何月だったのだろう。
ブログを書くようになる以前のタイへの旅は最早いつ行ったのかよくわからないことが多い。
手帳の記録を見ればわかるのだけど、手帳自体散逸してしまっているし残っているものもどこに保管しているのか忘れてしまった。
とりあえずブログを読み返した。
やはり僕は9月のタイを訪れていた。
この旅では本当によく雨に降られたことを思い出した。
昼間はそうでもなくてもバンコクでは毎晩のように土砂降りの雨が降った。
そして僕はバンコクの路上で恋に落ちた。
いろんな想い出が一気に噴き出して懐かしさの中に切なさとバカらしさと恥ずかしさが入り混じって混乱する。
タイの雨音と雨の匂いには様々な気恥ずかしい記憶の残滓が絡みあって僕を惑わせる。
昔のように雨が降るタイの街並みに自分がいることを想像したら気持ちが騒ついて浮き足立った。
またあんな旅をしてみたいと思う一方で心の弱い部分が警報を鳴らす。
いま雨のタイを旅したら僕はスコールの中で帰り道を見失うかもしれない。
そんな予感がした。
雨季が明けたら旅をしよう。
騒つく心の揺らぎから目を背けて逃れるようにそう思った。
僕は以前のように雨のタイを旅することに郷愁を覚えながらそれでも雨のタイに囚われてしまうことを恐れた。
いろいろな煩わしいことを放り出し逃げ出してしまいそうな自分を恐れた。
本当は驟雨に打たれながら恋に堕ちてしまいたいくせにそうなることを恐れる僕はタイから遠く離れているうちに諦めを知り情熱を失いすっかり歳をとってしまったのかもしれない。
タイ行ったらこれ食べよう!: 地元っ子、旅のリピーターに聞きました。
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