[ま]驟雨 @kun_maa
さっきまでのジリジリと焼けつくような暑さをかき消すように風が急に僕らを包んで吹き抜けていった。
急いで呼吸をするように次々と吹き抜けていく風に驚いているとあっという間に暗くなった空は陰鬱で禍々しい色の雲に覆われその一部が低く垂れ下がってきている。
突然の稲光と雷鳴。
南国の街に漂う湿った空気の匂い。
大通りの向こうから激しい雨が迫ってきたように見えたその刹那僕たちは叩きつけるような雨の中にいた。
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土砂降りの雨のなかを雨宿りできる場所を探してふたりで走り出した。
手頃な軒先きはすでに地元の人たちでいっぱいだった。
ようやく見つけた閉店後の銀行の軒下に並んで立ち激しい雨音と重く響く雷の音を聞きながら彼女の様子をうかがう。
濡れたTシャツに透ける下着のラインや脚にはりついたスカートが気になって僕はなんだか照れて横を向く。
沈黙が怖いからどうでもいい話ばかりが口をついて出てくるくせに肝心な気持ちを口にすることができなくて時間だけが過ぎていく。
異国の街に降り注ぐ雨音がまるで映画のBGMみたいだった。
雨に煙る街並みを彼女と並んで見つめているこの時間が切なくてだけど嫌なものではなくて。
なんだろうこの感じ。
もしかしたら僕の気持ちなんてとっくに彼女にバレていてそれをわかってわざと黙って楽しんでいるんじゃないかって妄想が膨らんで。
すぐ横に彼女の体温を感じながらこのまま雨が止まなければいいのにって思ったんだ。
数時間後に僕たちはそれぞれ別の国へと旅立っていくというのに。
あの夏休みの驟雨あるいはマンゴーレイン。