幽霊や妖怪や悪魔や化け物なんかよりも本当に怖いのは人間だよなんて言われたりもしますが。
人間関係でそこまで怖い思いをしたことがないので実感がわきません。
やっぱり得体の知れない幽霊的なものの方が怖いよねぇという子どもみたいな人生経験の底の浅さが露呈してなんだかごめんなさい。
まあ得体が知れないということでいえば人間の心の奥底で蠢めくどろどろとした怨嗟や嫉妬心なんてのはやっぱり底なしに怖いのかもなあと思うことはありますけどね。
そんなわけで何かが来るんですよこの映画「来る」は。
なにが来るのか。
来るよ「あれ」が来るよと言われる「あれ」が一体何なのかは最後までわかりません。
名前がないの...
名前を言ってはいけないあの人的なぼるでもーとさんですか?
名前もわからず超自然的な何かが理由も明かさないまま恐ろしい災厄をもたらすというホラーな感じ。
だいたい本当の恐怖ってのはそんなもんですよね。
細かい説明なんて誰もしてくれないのです。
何が何だかわからないままそれでこそリアルだしそれでこそ理不尽。
とはいえその辺にこだわりすぎて全てを観客に丸投げしてしまうと芸術作品としては成立するかもしれませんがエンターテイメントな娯楽作品としてはどうなんだろうかという感はあります。
登場人物たちの心理面や次第に明らかになるそれぞれの心の闇的な部分については無駄な説明を加えることなく自然な感じでじわじわと知らされていくので現実感があっていい感じだなって思います。
情報を与えられ過ぎない快感とでもいいましょうか。
それはやっぱりなんだかわからないことへの恐怖を煽るのではないかと思います。
そういう演出の一方で一歩間違えるとコメディになってしまいかねないような派手で突拍子もなく情報量過多で非現実感さえある演出でぶるんぶるん脳が揺さぶられます。
現実と非現実のアンビバレンスで絶妙なバランス感覚が生み出すナンセンス一歩手前のギリギリを攻める構成の妙というか快感なのですよきっとこれは。
そして登場人物の現在の行動やそれを支える心理面に明らかに大きな影響を与えているであろう過去の出来事や「あれ」について不親切なほど観客に情報を開示しないことによる主人公たちの運命への多大な感情移入に対する拒絶感。
それが作品と観客との距離を作り全体を俯瞰するように仕向けて恐怖への心理的な没入感はないものの劇中劇を観ているようなエンターテイメント感をもたらしているのではないかという不思議な感じなのです。
様々な物事を内包し問題を小出しに顕在化しつつそれを千切っては投げ千切っては投げしながら余計な説明なく最大の見せ場であるお祓い大会に向かって疾走するかのようなこの作品。
心理的にのめり込んで怖さを体験する一般的なホラー作品とは一線を画しているのでこれをホラーと呼んでいいのか迷うところではありますがあなたにおすすめしたいくらいおもしろいです。是非是非。
僕は読んでないのですが原作はこの小説だそうです。