[ま]映画「ジェーン・ドゥの解剖」/事実に迫るほどじわじわとくる恐怖感に打ち震えろ @kun_maa
惨殺されたある一家とともに見つかった身元不明の女性の遺体。
地下に埋められていたその美女の死体は傷ひとつなく死後硬直も死斑もない美しい全裸の状態だったってのが始まり。
身元不明だから名無しの(仮名)ジェーン・ドゥ。
彼女の検死を行うことになった検視官のトミーとその息子のオースティンが彼女の死因を究明しようと解剖していくことで恐怖が彼らに降りかかるってのがこの映画のざっくりとしたストーリー。
タイトルと予告編だけだとどんな作品かよくわかんないけどとにかく怖そうだなってのが第一印象。
舞台となるのが遺体安置所という特殊空間。
しかも3代続く検視官の家なので設備は新しいけど建物自体は古くさい洋館ってもうそれだけで何かが起こりそうな空気が張り詰めるブルブルしちゃう雰囲気。
それなのにあゝそれなのに不意の嵐でその洋館遺体安置所に閉じ込められちゃうっていうソリッドシチュエーションスリラー的なあれ。
逃げ場のない恐怖と理不尽な悪意。
解剖を進めるごとに不可解な遺体の状況が明らかになっていく。
なんで彼女は死んだんだ?なんでこんなことが可能なんだ?一体彼女に何が起きたんだ?って深まる謎。
外見は傷ひとつないにもかかわらず両手首両足首の関節が粉々に砕かれ、舌は引き抜かれ、肺は黒焦げ、内臓には多くの傷跡が残っており、胃の中からは麻酔に使う花や布に包まれた彼女の奥歯が出てくるとかまじホラー。あ、ホラー作品だった。
その不可思議な状況を克明な解剖シーンに医学的な所見を挟みながらトミーとオースティンの会話を通して伝えられることでその後の恐怖感にリアリティが加えられるという仕組み。これがいい。bravo!
この恐怖感は解剖シーンという特殊な状況を経ないと説得力の生まれない種類のものでして、リアルな解剖シーンが苦手な人もいるだろうけど恐怖感に浸るためにはその洗礼を受けなければなりませぬ。
その先に待っている恐怖はぎゃー!っていう感じの明るい絶叫系ではないから。明るい絶叫系ってのも変だけどもっと陰湿な呪いとか呪怨とか念のような感じる怖さ。
クリーチャーやゾンビとか妖怪の類の視覚的に明らかな非日常的西洋系な怖さじゃなくてどちらかといえば日本的なその土地の生活や歴史の中に潜む恐怖的なものとでも言えばいいのか。
解剖っていう医学的なもので解き明かされていく肉体という物質的なものに織り込まれた目に見えない恐怖の見える化。
その恐怖感が包み込んできてじわじわと効いてくるんだよね。
それは見えそうで見えない何かだったり物音だったり思わず覗き込みたくなるような状況だったり。
全く中だるみなく次から次へと起こる恐怖体験に飲み込まれて打ち震えること必至。
この手の作品にあるお約束的な怖がらせ要素やストーリー展開もちゃんと取り入れていたりしてなかなかおもしろいと思うし最後まで飽きませぬ。
観ていると部屋の扉の向こう側が気になったり首筋がぞわぞわしたりするけどきっと気のせい作品のせい。
こういうホラー映画はけっこう好きです。
ああ映画館で観ればよかったかも。
このブログを気に入っていただけたら、ちょくちょくのぞきに来ていただけるとうれしいです。そして、とっても励みになります。
RSS登録していただける方はこちらのボタンをご利用ください。