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道端に咲いた秋の花々が数を頼りに咲き誇っているようでいてその裏側では近づく冬の足音に怯えているように、僕は君と出会いその輝き弾けるような笑顔と時折見せる繊細な心の美しさに惹かれてちっぽけな自分の本当の姿を知られることに怯えながら恋に落ちた。
誇れるものが何もないくせに何かがあるふりをして自身の虚さを自分で満たす努力を怠ったままで。
自分を強くあるいは優しく見せることばかりに腐心して虚構に積み上げた粉飾まみれの慢心で自身を覆い本当の自分の姿に気がつかないふりをしていた。
時折虚構の隙間を吹き抜ける現実の寒風に寂しい寂しいとつぶやいてばかりいた僕は手当たり次第になにものかに依存してはこれじゃないこれじゃないの繰り返し。
ハリボテの優しさを必死で支えることや自己憐憫に汲々として気がつけば君の姿さえ見失っていた。
砂漠にこぼした一滴の涙が足元の砂礫を一瞬でも潤すことなく消えていくように、結局僕は君に何も痕跡を残すことなく自滅して消えた。
君がいなくなり残ったのは元の空虚な自分自身だけ。
そんな昔のことを思い出したのは君が好きだった北風吹く街の雑踏の中で君の匂いと不意にすれ違ったから。
振り返ったところで君がそこにいるはずもなく匂いと結びついた記憶はいつも鮮烈すぎて僕はそれを持て余してしまうから言葉に綴ってこんなふうに放り投げることしかできない。
匂いとか思い出の消し方とかわからないから、上書き保存できたらいいのに (〈@〉night)
- 作者: ますだみく
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