「二人は別れるんじゃないんだからね。今はどうしようもないから別々に暮らすだけ。死ぬときは一緒だからね」って涙を浮かべながら僕に告げた君。
僕がカラオケで歌ったLOSOの歌「プルンニー(พรุ่งนี้)」を横で聴きながら静かに泣いていた君。
歌い終わった僕をその場で抱きしめながら号泣しちゃって「お金なら全部あげるから私から離れないで...」って途切れ途切れに耳元で涙声でつぶやいていた君。
君は言葉どおりにタイに大きな家を建て、僕を呼んでくれて真っ先に二人で泊まって抱き合いながら毎晩一緒に眠ったよね。あの頃が夢のようだ。
都内の狭いワンルームマンションの一室で、僕は君を抱きしめて眠るのがとても好きだった。
夜の仕事をしていた君が夜中に帰ってきて、キスをしてからそっと僕が眠っている布団にもぐり込んでくるのも大好きだったし、酔っ払った君に電話で呼び出されて迎えに行き、一緒に帰ってきて抱き合いながら眠るのもすごく気持ちよかった。
一晩中帰ってこない君を、ひとりぼっちの部屋で泣きながら待つのだけは大嫌いだったけど。
昔から眠りの浅い僕は、君のぬくもりを感じていると不思議とよく眠れたんだ。
君のぬくもりや柔らかさを感じながらぴったりと肌を寄せ合って眠るのって、なんであんなに気持ちよかったんだろう。
君の肌のぬくもりを感じていると心の底から安心できたんだと思う。
君のぬくもりも柔らかなその体も、甘い香りや髪の匂いも全部ずっと手放したくなかったのに。
二人で暮らした部屋を引き払う最後の夜は、一晩中一緒に飲み歩いていろんなところで抱き合って、バカみたいに泣いてたよね。なんでこんなにたくさん涙が出るんだろうって初めて思った。
明け方に帰ってきた部屋で抱き合って眠ったまま、僕はこのままいつまでも目覚めなければいいのにって割と本気で思っていたんだ。
二人は離れて暮らしていても絶対大丈夫って誓い合ったのに。
お互い辛くてもがんばろうねって言ってたのに。
裏切ったのは僕なんだ。
君が困っている時に十分に助けてあげることもできず、いつの間にか君を重荷に感じてしまった僕はバカだから、もう君のぬくもりさえ忘れてしまう。
君のことを忘れていく自分が許せなかったはずなのに、そんな気持ちすら僕は忘れていく。抱き合って眠ったことも、世界中で一番心地よい眠りに落ちていた夜の想い出も何もかも忘れてしまう。
そして眠れない夜に僕はひとり涙ぐんで震えている。
僕はただ君と抱き合って眠ることができればそれでよかったのに。それが幸せだったのに。失って初めて気がつくなんてやっぱり僕はバカなんだな。
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