[ま]眠れぬ夜に金木犀 @kun_maa
僕の周りから人が次々に去っていくような気がしてさみしくてたまらなくなった。
なんでみんな僕を置いていってしまうのだろう。
好かれようと足掻けば足掻くほどそれが嫌悪感を生み出すのかもしれないな。そんな自覚のない嫌な奴。
自分のクズなところばかり考えていたら目が冴えて眠れなくなってしまった。
目を瞑るも眠れないままに時計の針だけがカチカチと進む深夜2時の丑三つ時。
眠れないことへの焦りと裏腹になぜか遠くに感じる彼者誰時。
焦燥と愁いが増幅して鼓動が早まる自虐的な孤独感への耽溺。
ズブズブと感情が沈み込む前に僕は眠ることを諦めて外に出る。
心がぞわぞわとしてこんなふうに沈没しそうな夜は散歩に限る。
誰もいない深夜の住宅街。
虫の鳴き声と自分の足音以外近くに音はない。
遠くに聞こえるバイクやトラックのエンジン音が小さなうなり声のように。
あてもなくさまよい歩き。
様々に浮かぶ心のつぶやきに耳を貸さないように。見たくないもの知りたくないものから逃げるように。
すれ違う人もいない真夜中の路上で自分の拍動と少し上がり気味な息づかいを感じながらひたすら歩き続けたい。
昼間舞い上がった芥が降り積もってくるように澱んだ街の匂い。
排水溝から漂うドブの臭い。
点滅している切れかけた街灯の下に人影を見たような気がして立ち止まる。錯覚。
湿気の少ない冷ややかな空気に包まれながらも次第に汗ばむ額。
遠くに見えるコンビニの明かり。急に感じる喉の渇き。
いつの間にか早足になっていたことに気づき立ち止まって呼吸を整える。
悩んでいたことがバカらしくなり取るに足らないことのように思える瞬間が訪れる。
独りでこんな時間に悶々と悩んだところで何も変わらないよなって思う。
そろそろ帰るかな。
自己完結した安堵感か。
現実は何も変わっていないんだけどなって思うことは自虐的な諧謔を孕んだ諦観なのか。
頭でっかちで柔軟性を損なった感情の吹き溜まりにため息ついての帰り道。
ふわっと鼻の奥をくすぐる金木犀の匂いに秋の重さを感じて不意に涙がこぼれ落ちそうになる自己憐憫なセンチメンタルの成れの果て。
- 作者: ダニエル T.マックス,柴田裕之
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