[ま]le sourire de la fée @kun_maa
タイトルをフランス語にしたところで中身は日本語。
自己陶酔の痴れ者感がたぷんたぷん揺れて溢れだしそうなところが僕らしいといえば僕らしい。
3月になってから週末に飲みすぎて二日酔いだったり寝不足だったりする事が多いものだから土日朝のジョギングを見送ることが多くてさ。
たとえ走ることができても暖かくなってきたから走る時間帯が早くなったりしてしばらく僕の妖精に逢う事叶わず。
日々の些事に忙殺される毎日。
モヤモヤとする気持ちを抱えて僕は走り出したんだ先週日曜日の朝。
走り終わって息を整えていると懐かしい総白髪が僕の視界にスーッと入ってきた。
相変わらずふわふわひょこひょこと軽やかに歩いている彼女に向かって「おはようございます!」とちょっと距離はあったもののたまらず声をかけた。
僕に気づくと嬉しそうに微笑みを浮かべてこちらに向かってくる彼女。
その笑みはまさに le sourire de la fée だ。
前回顔を合わせた時よりも少し痩せて小さくなったように見えたのは冬でも薄手の服装がさらに春らしく薄着になったからかもしれない。
近づいてきて最初に僕にかける言葉はいつも同じ。
「あなたはとても背が高いのね」
その日いつもより饒舌だった彼女は毎回交わす言葉の他に「毎日2回、朝と昼間に歩いているのよ。他にやることがないからね」と少しはにかんだように話しかけてきた。
「歩くのは健康にいいって言いますからね。いいことですよ。」と当たり障りのない返事しかできなかった自分を呪い殺したくなりながら僕も彼女に微笑み返した。
別れ際に「風邪をひかないようにね」なんてやさしい言葉をかけてくれるものだから僕のささくれ立った心の棘が溶けて流れ落ちる。
いつまでも元気に散歩をする姿が見たいなって僕は名前も家も知らない老女に対して思った。心の底の方がじんわりとした。
「そうそう、あなた身長は何センチあるの?」ってひとりで勝手に想いに浸っていた僕に不意に聞いてくるものだから妖精は油断がならない。
これで何度目ですか?と吹き出しそうになる僕の顔をまじまじと見つめる彼女のまっすぐな瞳にドキッとしながら。
le sourire de la fée
Ma fée