Queen が苦手だった。
ギターオーケストレーションはクラシック音楽を、重厚なコーラスはオペラやゴスペルを連想させられ何となく取っ付き難くて苦手だった。
フレディ・マーキュリーの躍動感ある独特のパフォーマンスも苦手だった。
そしてこれは全くもって Queen のせいではないのだけど過去にはこんなこともあってやっぱり Queen は苦手だなって思いが強まった。
そんな僕が映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観た。
Queen の楽曲が苦手で自分から積極的に聴こうとは思ってこなかった僕ですら彼らの数多くのヒット曲はこれまでの人生の中に織り込まれている。
I Was Born To Love You
Don't Stop Me Now
Radio Ga Ga
Killer Queen
Crazy Little Thing Called Love
Who Wants to Live Forever ...etc.
とても書ききれない。
彼らの曲はどれも幼い頃から何となく聴き覚えのあるものが多い。
それだけ様々な場所で流れていて接する機会が多かったのだろう。
1991年11月24日にフレディ・マーキュリーがこの世を去ってから生まれた人たちでさえ「ああこの曲聴いたことある」って耳なじみの曲がきっと何曲かあるに違いない。
また2011年に流れたフレディ・マーキュリーのカップヌードルCMが印象に残っている人も多いんじゃないだろうか。
この映画にはそんな Queen の名曲の数々が使われている。
映画だからストーリーがありそのストーリー自体はこう言っちゃなんだけどこの手の映画にありがちな平凡な話である。
ざっくりと言ってしまえばフレディ・マーキュリーという個性的で才能ある生意気な青年の苦悩と成長と挫折と愛と成功を Queen という稀有なバンドを軸にして紡いだ物語だ。
僕たちはきっとストーリーというよりは彼らの音楽とその基になった背景のようなものに触れることで感動する。
Queen をリアルタイムで満喫したであろう僕よりもちょっと上の世代の人たちは自分の中の Queen と対峙することで。
Queen なんてよくわかんないという世代は未知の世界の Queen という伝説に触れることによって。
僕がこの作品を観に行った日、映画館で僕の両隣はおじさんだった。
奇しくも僕を含めておじさんが3人並んでいたわけだ。
僕よりも年上っぽい人が左側に僕よりも若そうな人が右側に座っていた。
そして3人とも映画を観ながら後半では鼻をすすって泣いていた。
特にウェンブリー・スタジアムでの LIVE AID とそこに向けて一気に突き進むラストの一連の流れは畳み掛けるように感動の渦に放り込まれるようでヤバい。
Queen が苦手だった僕が泣いていた。
自分が何で泣いているのかよくわからなかった。
自然にぶわっと涙が溢れてきたのだ。
Queen の曲をもう一度ちゃんと聴き直したいって思った。
そしてライブに無性に参加したくなった。
ボヘミアン・ラプソディは僕にとってそういう作品だ。