とても暴力的で驚くほど繊細な内面をもつ魅力的な女の子とつきあっていたことがある。
僕はがさつでだらしないし優柔不断だからつまらないことで彼女の逆鱗に触れて殴られたり蹴られたりしたものだ。
時代が時代なら間違いなくDV案件。
理不尽な理由で痛い目にあえば僕だってそりゃ腹が立つこともある。
腹が立って言い返したことは何度もあったけど結局それすらも圧倒的な暴力でねじ伏せられてしまうので最後には黙って殴られてる方がいいやってなってた←
棍棒で頭を殴られたこともあるし包丁で刺されたこともある。
僕に対して暴力的なのはもちろんだけどそれだけに留まらず一緒に入った飲み屋で態度の悪い客に注意してどつき合いの喧嘩になったのを止めたことだって何度もある。
それでも彼女のそばを離れなかったのは僕にはほとんど見せることのない優しさや彼女自身の傷ついている心に気がついたから。
過去に信じた人たちから何度も裏切られて傷ついて人を信じられなくなっているのにそれでも困っている人を見捨てられずに自分のことを犠牲にしても他人に優しくする姿がとても愛おしく思えたからなんだ。
素直になれない彼女にとって暴力は繊細さと優しさを隠すための手段だったのだと思う。
初めて映画「猟奇的な彼女」を観たときにまるであの頃の僕と彼女みたいだって思った。
映画との運命的な出会いなんてあるものなんだなって初見で好きになった。
「猟奇的な彼女」は謎めいて暴力的な彼女と心優しいけどダメ男のキョヌとの笑えてぽろぽろ泣ける最高のラブコメだ。
よく見ると僕ってキョヌ役の俳優にちょっと似ているかもという勝手な思い込みによる親近感は抜きにしてもよく練られた構成や人物描写、内面の描き方など何回観てもその度に全僕が泣いてしまう不朽の名作だと思う。
そんな大好きな作品の続編が出ていたのを知ったのはつい最近のこと。
続編とかあり得ないでしょって思った。
タイトルが「もっと猟奇的な彼女」って安易すぎるでしょ。
主人公のキョヌのダメっぷりは相変わらずで少し笑えたけど正直がっかりした。
シリーズ化すると劣化するという見本のようだと思った。
暴力的なことに対する内面の裏付けがしっかりとあった前作を形だけ取り入れようとするから必要のないアクションが無駄に挿入されていて痛々しい。
とってつけたようなそれらのアクションは全然「猟奇的」でもなかった。
今回彼女役のビクトリアは確かに美しい。
あんな女の子きれいすぎてずるいわーとか思うのだけど表情がわざとらしくてどうしても鼻につく。
ストーリー展開や人物の描き方も前作に比べたらまるで薄っぺらくて悲しくなった。
こんなの「猟奇的な彼女」じゃない。好きくない。
単発のラブコメとしてみればそこまで酷くは感じなかったのかもしれない。
そこそこ笑えるからね。
でも少しも泣けなかった。
「猟奇的な」という看板が重すぎたのかもしれない。
そんなわけで僕がオススメするのは「猟奇的な彼女」ということで。
あれ?どうしてこうなった?