[ま]世界は宗教で動いてる/イスラム教贔屓(ひいき)を感じる宗教の入門書 @kun_maa
日本人は宗教を、経済・政治・法律・科学技術・文化芸術・社会生活と別物と思っているが日本以外のたいていの国では、それらをまるごとひっくるめたものが宗教であり、人類の知的遺産とは宗教のことだと著者は述べる。
そして今グローバル世界で必要なのは、異なった信仰や文明に属する人々が、どういう国際社会をつくっていけるかという構想であり、そのためには「宗教リテラシー」が不可欠だというのが著者の主張である。
たしかに日本人として日本国内だけで生きていく上では、宗教は葬式や結婚式、初詣やお盆、お彼岸くらいしか身近に関わってこない。
それもどこまで宗教的意味合いをわかってやっているかというと大変心もとない。
それに対して、僕が訪れた東南アジアの国々では宗教そのものが生活に溶け込んでいる印象を受けたことは確かだ。欧米のことは知らんけど。
だから海外に出て行く上で無用な摩擦を避ける為には、やはり様々な宗教についてある程度の素養を身につける「宗教リテラシー」は必要だという実感はある。
慶応丸の内シティキャンパスで行われた講義を基に書かれたという本書は、質問やそれに答えるといった形式をとりながらユダヤ教、キリスト教、イスラム教という一神教の宗教からヒンドゥー教、仏教、儒教、神道まで数多くの宗教についてわかりやすく概観していく。
それぞれの宗教に関わる説明は概略とはいえ、とても興味をそそる内容となっておりなかなかおもしろい。
ただ、1点気になったのは著者のイスラム教に対する態度である。
どうもかなりのシンパシーをイスラム教に対してもっているようで、他の宗教と対等に扱っているようには思えなかった。
何と言ったらいいか...とにかくイスラム教をベタ褒めなのだ。ひいきしているとしか思えない。
いや、もしかしたらイスラム教を貶した場合の原理主義者による報復を恐れているのか?まさかね。
著者のイスラム教ひいきは様々な点で表されているが次の文章が象徴的だろう。
さて、人類全体がムスリムになるとどうなるでしょう。争う理由がなくなりますから、平和が来ます。平和、これがイスラムです。イスラムは平和のための宗教なのです。(P.145)
ちょっと待って欲しい。
著者は「イスラムは平和のための宗教」だと言うが、自分の宗教における平和を願わない宗教がどこにあるだろうか?
また様々な宗教が同じように考え、その勢力拡大のために多くの争いを引き起こしてきたのではなかったか。イスラムだけが平和な世界をつくりだす宗教だとなぜ言い切れるのか不思議でしかたない。
そんなイスラム教ひいきの部分を除けば、多くの宗教の概要を知ることができる宗教の入門書として適当な本なのかもしれない。
しかし、あくまでも概要を知るための入門書であって内容をすべて鵜呑みにすると誤った宗教観を身につけることになるかもしれないという危惧はある。
それはどんな本に対しても違いはないといえばそうなのだろうが。
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