[ま]映画「レイン」/バンコクの闇の世界に生きる聾唖の殺し屋と純真な少女の切ない物語に僕は何度でも泣く @kun_maa
復讐の総仕上げと自分のこれまでの行いにケリをつけるため、自分のこめかみに銃をあてる殺し屋のコン。
雨粒がスローモーションのように彼に降り注ぐ。
彼の聞こえない耳にも雨の音は、フォンの叫びは聞こえたのだろうか。
耳が聞こえず、話すこともできない青年コンがその短い人生の中で得たものは、自分に殺しの技術を叩き込んでくれた仲間ジョーとその元恋人オームとの絆。
殺し屋を生業とする彼ら。
暴力は暴力を呼び、復讐の連鎖は止まらない。
何よりも大事な二人の仲間を失って初めて、自分がこれまで何の感情もなく、ただ金と仲間のために多くの人間の命を奪ってきたことに気づくコン。
彼の音のない世界は、仲間と孤独と殺しと銃だけで構成されていた。
そんな彼の中に何の差別も偏見もなく偶然入り込んできた、薬屋の店員であるフォン。
殺伐とした生活の中で、純真なフォンと出会い初めて人間らしい笑顔を見せるコン。
二人の出会いやデートシーンは何度見ても心が洗われる。
しかし、やっと触れたそんな大切な世界も彼の生きる闇の世界がほんの少し垣間見えただけで簡単に壊れてしまう。
生きる世界が違う。生きてきた世界があまりにも違いすぎる。
言葉で言うのは簡単だが、コンとフォンの気持ちを想うと切なくて泣いてしまう。
仲間の最後の復讐に向かう前に、フォンに別れを告げに来たコン。
彼の気持ちがこもった手紙に一度閉ざされた心の扉を開くフォン。
彼女の名前のフォンはタイ語で「雨」のことである。
彼女の真心が降り注ぐかのような雨の中、復讐に全てをかけたコンの身を案じて現場へと急ぐフォン。
雨の中で、復讐相手と自分の頭を並べて自分のこめかみに銃をあてるコン。
言葉にならない声で嗚咽を漏らしながら、まるでそれまでの自分の人生を懺悔するかのように、そしてフォンに気持ちを告白するように、フォンに宛てて書いた手紙を話せない言葉で口にするコン。
現場についてコンのもとへ走るフォン。降りしきる雨と全てを諦観したかのようなコンの表情。
そして響く一発の銃声...
この映画を観るのは、もう何度目だろうか。
原題は「BANGKOK DANGEROUS」という1999年製作のタイの映画だ。
同じ監督でハリウッドリメイクされていて、タイトルもズバリ「バンコック・デンジャラス」という。
主演は、あのニコラス・ケイジなのだが正直なところ、オリジナル作品とは比べ物にならない駄作で観る価値を感じない。
この作品に「レイン」という邦題をつけた人は、本当にすごいなあと思う。
この作品の本質を見抜いていないと、あの原題からこんなウエットなタイトルはつけられないはずだ。
何度観ても毎回必ず泣いてしまう僕にとってこの作品は、素晴らしい作品が多いタイ映画の中でも別格の名作なのである。
TSUTAYAでレンタルできるところは多いので、未見の方は是非一度観てほしい。
そして、タイには本当に殺し屋が存在する。選挙のたびに候補者が殺されたり、商売敵を殺したりと需要は多い。そんなタイの闇の部分を描いた作品でもあるのだ。
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