[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]イスラム国 テロリストが国家をつくる時/単なる過激派原理主義ではない不気味さを持つ集団を知るための入門書 @kun_maa

イスラム国」という名前を初めてニュースで目にした時、なんだそれ?って思った。

どうやらイスラム教徒のテロ組織らしいけど、勝手に「国」とか名乗ってバカなの?とも思った。ところがそんな僕の無知は、本書を読むことで得体の知れない不気味さへと変わることになる。 

イスラム国 テロリストが国家をつくる時

イスラム国 テロリストが国家をつくる時

 
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最初に名前を目にした時に思ったとおり、僕は彼らをアルカイダボコ・ハラムなどの武装テロ組織と同じだと思っていた。その中でも、ちょっと誇大妄想が入ってしまった残念な狂信者の集団だと思っていたのだ。

だが、「イスラム国」は従来の武装テロ組織とは、目的も拠って立つ手法も異なる集団なのである。

まず、彼らは他の武装組織のようにその地域や国に利害関係を持つ他国の経済援助を受けて活動する代理戦争の駒という立場から独立する道を着実に選んだ。

スポンサーから経済援助を受けておいて、その意のままにならず、勝手に経済的基盤となる油田地帯を次々に手に入れ、援助国を必要としないまでの経済力を身につけた。

そして、次の記述にあるように、本気でスンニ派サラフィー主義による現代のカリフ制国家を建設しようという明確な意思を持っている。

イスラム国」はまた、近代国家の要件をすべて満たそうと試みている。それはすなわち、領土であり、主権(目下のところは内部的に認められているだけだが)であり、正統性であり、行政制度である。だから彼らは、小さな飛び地のような領土では満足しない。求めるのは21世紀のカリフ制国家の建国であり、他の集団のように恒久的な無政府状態を望んではいない。その証拠に、制圧地域で彼らがまっさきにしたのはシャリア(イスラム法)の遵守を強制することだった。「イスラム国」は、法と秩序の維持を自らの務めと心得ており、やり方は乱暴で原始的にせよ、ともかくもそれを実行している。

彼らが目指しているカリフ制国家は中世的なイスラム国家ではない。

タリバンなどの原理主義武装組織が理想とする世界が、コーランの教義と預言者の書物だけに基づいた中世的なイスラム国家だったのに対し、「イスラム国」の目指す国家は近代的な国家、被征服民の同意と支持を得た国家である(ただし、国民の定義は特定の宗派に限定され、女性の政治参加は除外されるが)。

したがって、彼らは住民の同意を得るために制圧地域の子どもたちに対しポリオワクチンを接種したり、食糧配給所を建設して貧困者に無料で食糧を配ったり、道路などのインフラの整備を行ったりと、社会改善や生活水準向上のためのプログラムを実行している。

そのための行政組織として、戦闘員と非戦闘員を明確に分けているのも特徴的である。

我々が報道やインターネットで知らされる彼らの姿は、前近代的な姿と野蛮な刃物を持ち、オレンジ色の囚人服を着せられた人質を残酷な方法で殺害しているというものばかりだが、そこだけに目を捕らわれていると彼らの本当の脅威を見誤る可能性が大きい。

イスラム国」は新しいカリフ制国家を奉じることによって、自分たちはかつてシオニストが掲げたような近代的な政治主体であることを示そうとしている。(中略)ユダヤ人にとって古代イスラエルが「約束の地」であったように、カリフ制国家はムスリムにとって理想の形、完璧な国家であり、そこではついに解放が実現する。何からの解放かー数世紀におよぶ屈辱、差別、異教徒への屈従からの解放である。この異教徒とは言うまでもなく外国勢力であり、それに加担するムスリムを含む。ユダヤ人は、世界に散らばるユダヤ人のために、古代イスラエルの現代版を建国した。まさにそれと同じように、「イスラム国」はスンニ派のすべての人々のために、21世紀のイスラム国家を、それも国家としてしかるべく機能する国を、興そうとしている。少なくとも彼らのプロパガンダは、そう主張しているのだ。「イスラム国」のメンバーの残虐なふるまいとイスラエル建国の父たちのふるまいを比べるのは、不当だし不快だと感じられることだろう。だが、「イスラム国」を支持し、共鳴する人々の目には、カリフ制国家再興の試みはそのように映っているのである。

イスラム国」のこのような主義主張は、そのプロパガンダの威力もあって、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、北アフリカ、オーストラリアなど世界各国から志願兵を呼び込むことに成功しているという。

イスラム国」がやっているのは「宗教的浄化」だとしても、彼らにとっては布教活動であり、誰であれスンニ派サラフィー主義に改宗すれば市民となる機会を与えている。これは一見すると、宗教戦争のような様相を呈しているが、その目的は同じ宗派の国民だけによる領土の獲得と政治的な主導権を握るための戦いなのであり、正確には宗教戦争ではない。そこも他の原理主義武装組織の闘いとは異なっている部分である。

このように、今までのイスラム原理主義武装組織のようにいたずらにテロを繰り返し、混乱を招くだけのゴロツキ集団とは存在を異にし、イスラム国家の建国を目指し、実績もあげている「イスラム国」という集団。

通常の近代国家と違うのは、国家建設のための手段がテロであるという点である。

これまでの世界では、近代国家としての正統性を確立する手段として、革命は認められるが、テロは認められないという。

前近代的な残虐性と近代的なプロパガンダを有し、国際情勢を確実に理解した上でそれを利用しながらテロを手段として国家建設を目論む集団。これが「イスラム国」であり、今までに経験したことない不気味さと理解が及ばない怖さを有している。

この「イスラム国」に対して、どのように対処するかによって今後の世界の混乱、あるいは第三次世界大戦への危険すら引き起こしかねない大きな問題をはらんでいる。

イスラム国」の出現した背景や彼らの目的や手段など、多くのことを知ることができるとてもわかりやすい入門書であり、まず最初に読みたい「イスラム国」本である。

そして、知れば知るほどその存在のヤバさに震えが走ることになる。

バカなの?とか思っている場合ではないのだ。 

イスラム国 テロリストが国家をつくる時

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イスラム国 テロリストが国家をつくる時 (文春e-book)

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