今僕たちが暮らすこの世の中は、リアルではあっという間に外国に行け、ネット上には様々な情報が飛び交い、一見自由でなんでも叶えらるんじゃないかという錯覚に陥りそうになることがある。
でも、そんな世界でも(そんな世界だからこそ?)、まだまだ僕たち一般人が立ち入ることができない場所がたくさんある。
本書は、そんな非公開の場所の中から厳選した99カ所を、写真や地図とともに紹介してしている。
タイトルだけを見ると、なにやら陰謀論渦巻くトンデモ本のような印象を受けるかもしれないが、発行元はあの「ナショナル ジオグラフィック」だ。その辺に転がっているインチキ陰謀論者の本よりはずっと信用がおける。

絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで
- 作者: ダニエル・スミス,ナショナルジオグラフィック,小野智子,片山美佳子
- 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
- 発売日: 2014/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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僕たちがそれらの場所に立ち入れない理由は様々だ。
ある場所は「研究施設やプライベート施設」であり、またある場所は「軍事的・政治的機密地域」や「宗教的に重要な場所」、「噂だけで存在が確認されていない場所」、そもそも「存在自体が秘密にされている場所」などである。
本書のまえがきには次のように書かれている。
本書は、程度の差こそあれ、立ち入りが制限されている公共の場所99カ所を紹介している。私たちを締め出している理由はさまざまだが、要するにその場所は、私たちが知りたいことと、誰かが私たちに知らしめてもよいと考えることとの、果てしなき戦いを示すものなのだ。ある場所では、業務の性質を理由に私たちを拒む。スパイが暗躍する諜報活動の拠点や、インターネットにあふれる情報を密かに追跡し膨大な知識を集積するデータセンターなどがそうだ。いくつかの場所は、その存在が公式にも認められず、所在地さえも分からない秘密の厚いベールに包まれている。(P.10)
紹介されている場所を見ていくと、僕の場合は「ぜひ行ってみたい場所」、「興味はあるけど行きたくない場所」の2つに分けられた。全ての場所が行きたいと思えるほど、魅力的というわけではないのだ。もちろんなんの興味もわかない場所もあった。
これはそれぞれ読む人の興味関心によって大きく異なるだろう。
ちなみに僕の場合の一例を挙げるとこんな感じだ。それぞれ5つずつ挙げてみる。
ぜひ行ってみたい場所
①太平洋巨大ゴミベルト
(非公開の理由:管轄不明、世界最大のゴミ捨て場)
北太平洋にはプラスチックの破片が集積して漂っている海域がある。その面積はテキサス州の2倍。この膨大な量の廃棄物は世界中から排出され海流に乗って運ばれてきた漂流ゴミで、生分解されずに長期にわたって生態系を脅かす。しかし、この問題に包括的な対策を講じた国家や国際機関はまだない。(P.14)
②スカイウォーカー・ランチ
(非公開の理由:立ち入り制限、映画「スター・ウォーズ」製作者の私有地)
スカイウォーカー・ランチの敷地面積は20平方キロにおよぶが、そのうち利用されているのはわずか0.06平方キロだ。1978年、ジョージ・ルーカスは空前のヒット作「スター・ウォーズ」の収益を投入して、この広大な土地を購入した。世界の視線に邪魔されることなく、自分とスタッフの創造力を存分に発揮できる場所となっている。(P.21)
(非公開理由:機密事項、米防衛実験基地および地球外生命体・物体を目撃したとされる場所)
エリア51はネバダ州にある米国空軍施設の一部で、隣接するカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地の管轄下にあると見られている。航空機や武器の開発・試験の拠点であれば、その存在はひた隠しにされて当然だ。ところがエリア51は、「秘密の場所」どころか、おそらく世界一有名な「公然の秘密」である。宇宙人が地球に飛来した確かな証拠が隠されているという陰謀論が根強いからだ。(P.30)
④法医人類学研究施設
(非公開理由:立ち入り制限、人間の腐敗・分解に関する研究のための「死体農場」)
法医人類学研究施設(FARF)はテキサス州立大学法医人類学センターの管轄下にある。このユニークな野外研究施設の主目的は、「死亡時間特定のための死後経過の再現および人体の腐敗・分解に関する研究」だ。「死体農場」と聞けばどのような光景か想像できるのではないだろうか。(P.48)
⑤ニューヨーク連銀保管庫
(非公開理由:高度なセキュリティ、備蓄量世界一の金塊が眠る場所)
米国の連邦準備制度を構成する12行の連邦準備銀行のうちの1行、ニューヨーク連邦準備銀行は、マンハッタン南部にそびえる22階建ての建物に入っている。本当に興味深いものは、その建物の地下にある秘密の金の保管庫だ。2008年の連銀の金備蓄量は5600トンで、これは世界の公的貨幣用金準備の5分の1を超える量に相当する。(P.82)
興味はあるけど行きたくない場所
①ADXフローレンス刑務所
(非公開理由:高度なセキュリティ、米国でもっとも警備が厳重な刑務所)
米国の最も危険な犯罪者たちを収監するADXフローレンス刑務所。「ロッキー山脈のアルカトラズ」との異名をもつ。ここに服役しているのは、筋金入りのテロリストや普通の刑務所に収監するには危険すぎる囚人ばかりだ。多くの受刑者たちにとって、この刑務所を去る時は棺桶に入るときになるだろう。(P.36)
②グアンタナモ湾収容所
(非公開理由:機密事項、2001年同時多発テロ後に設けられた悪名高い米国の捕虜収容所)
グアンタナモ収容所が設立されたのは世界貿易センターとペンタゴンへのテロ攻撃があった翌年の2002年だ。アフガニスタンやその後のイラクの戦闘で拘束したテロ容疑者を収容してきた。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルがグアンタナモを「現代の強制収容所」として糾弾し、米国は施設閉鎖を求める国際的な非難の声にさらされている。(P.94)
③ポートダウンの国防科学技術研究所
(非公開理由:機密事項、物議を醸す、政府の生物・化学研究センター)
英国でもっとも謎に包まれた研究施設がポートダウンにある。ほぼ1世紀にわたり、化学生物戦に重点を置いた研究を行ってきた。兵士に対し不当な人体実験を実施した結果、正確な数は不明ながら多数の死者を出し、退役軍人に長期にわたる深刻な症状をもたらしたとして訴訟を起こされた。(P.106)
④地雷原バスクール
(非公開理由:立ち入り制限、第一次世界大戦で残った最大の地雷の埋設地)
バスクール(「農家の庭」の意)は、イーペル近郊に広がる0.6平方キロの個人所有の農場だ。農場があるメシヌリッジは、第一次世界大戦の西部戦線で一進一退の激戦が繰り広げられた戦場だった。現在、農場には2万2500キロという大量の爆薬が詰まった未処理の地雷が埋まっている。(P.130)
⑤第22号管理所
(非公開理由:存在未確認、5万人を収容している強制収容所。おもに政治犯を収容)
政治犯とその家族の収容施設である北朝鮮の第22号管理所は、ロシアや中国との国境に近い山の中にある。秘密主義の北朝鮮政府はその存在を否定しており、地図にも載っていない。だが、過去の収容者や職員が、ここで残虐な行為が横行し、人間の尊厳が侵されていると証言している。(P.235)
全部で10カ所の名称と非公開理由や概要を抜き出したが、もちろんここ以外にも興味深い場所はまだまだある。
以外に思ったのは、秘密結社的なものの関係が意外とあるなって思ったこと。秘密結社なんて、イルミナティやフリーメーソンくらいしか聞いたことがなかったけど、他にもいろいろあることを初めて知った。
各国の諜報機関の本部、密輸や海賊などの犯罪がらみのトンネルや町、ヒトラーの地下壕、ビンラディンの隠れ家、バチカン機密文書館、チンギス・ハーンの墓や謎の研究施設・実験場なども興味深い。
世界中に存在する非公開区域をこの1冊で旅することができるなんて、すごく魅力的で贅沢な本だ。写真や図が豊富なのもナショナルジオグラフィックならではの趣向で、とてもわかりやすい。
ちょっと高いとは思うけど、読んで損はない一冊である。

絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで
- 作者: ダニエル・スミス,ナショナルジオグラフィック,小野智子,片山美佳子
- 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
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