[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]年収は「住むところで」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学/生活水準を決めるのは学歴ではなく住むところかもしれない @kun_maa

本書のタイトルを見た時にパッと思い浮かんだのは、住むところって自分の年収で決まるんだよねえ。だって年収以上に経費がかかるところに住めないじゃない。当たり前だよ。なに言ってんのこの本?ってことです。でも、それは僕の大きな勘違い。本書の主題はそんなところにはないのです。 

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

 
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本書が取り上げているテーマは、これまで常識だと思われていた学歴や職業によって年収が左右されるという考え方を覆し、それらの要因よりも住んでいる場所による影響の方がより年収に対する影響が大きいのだというところにあります。

これはもちろん先進国と発展途上国という国の違いではなく、アメリカ国内での話です。アメリカ国内で雇用の集中する都市と、産業が衰退して雇用が流出(特に大卒者)する都市との給与水準の格差拡大の話です。

産業が成長し、雇用が伸びている都市の高卒者と、産業が衰退し、雇用が落ち込んでいる都市の大卒者の年収が逆転してしまうほど、「住むところ」の持つ影響力は強大になり、学歴による影響力を上回ってしまっているのがアメリカの現状なのです。

それは、現在の産業の中心であるイノベーション産業の成長により恩恵を受けるのは、ハイテク企業に勤める高学歴者だけではなく、その業界で働いていない人や、高学歴、高度な技能を持っていない人も含めて、その地域に暮らすあらゆる人たちがその恩恵に浴するようになっているからです。

それはなぜか。

ほとんどの地域で、雇用の3分の2は地域レベルのサービス業が占めています。それは小売店やレストランの店員、教師や看護師、美容師や弁護士などです。

本書ではこれらの地域レベルのサービス業に対して、次のように述べています。

地域レベルのサービス業は、雇用の大多数を生み出しているが、繁栄の牽引役にはなりえない。他の産業に引っ張られて経済が繁栄してはじめて、サービス業が栄える。人々の生活水準を向上させるためには、労働者の生産性を引き上げる必要があるが、サービス産業の生産性は大して変わりようがないからだ。(位置No.218

これらのサービス産業は自力では生活水準(ぶっちゃけ「給料」ですね)を向上させることは困難なのです。美容師やウェーターがその作業にかかる時間や人数は昔も今もほとんど変わらないのです。作業が変わらないもの単独で給料を向上させることは無理ですよね。だって、やっていることが変わらないのだから。

だから、今のイノベーション産業の前には製造業が経済の生産性向上を牽引していました。製造業の成長が何十年もの間、あらゆる業種の労働者の生活水準を向上させる役割を担ってきたのだ。それが、現在はイノベーション産業に変わっているということがひとつです。

さらに、イノベーション産業の成長があらゆる人たちの生活水準に影響を与えるもうひとつの理由があります。それが「イノベーション産業の乗数効果」と呼ばれるものです。

本書ではこのように書かれています。

イノベーション関連の産業は、その分野の企業が寄り集まっている地域に高給の良質な雇用をもたらす。それが地域経済に及ぼす好影響は、目に見える直接的な効果にとどまらない。研究によると、ある都市に科学者が一人やって来ると、経済学でいうところの「乗数効果」の引き金が引かれて、その都市のサービス業の雇用が増え、賃金の水準が高まることがわかっている。(位置No.232)

イノベーション産業の中心であるハイテク産業は地元に新しい雇用を生み出す力がずば抜けて強いそうなのです。

著者の研究によれば、ハイテク関連の雇用(研究職とかエンジニアなど)がひとつ創出されると、最終的にその地元のサービス業(美容師やレストラン店員など)での雇用が5つ生まれる効果があることがわかっています。この効果は製造業の3倍にも達するといいます。その結果として、今日の先進国では社会階層以上に居住地による経済格差の方が大きくなっているというのです。

もちろん、グローバル化と技術革新の影響を強く受ける分野では、相変わらず教育レベルの低い働き手よりも教育レベルの高い働き手の方が有利なことは間違いないのですが、そうでない分野(つまり地域レベルのサービス産業ですね)では、個人がどんな技能をもっているかよりもどこに住んでいるかがその人の所得を左右する大きな要因となっているのです。

 

通信ネットワークの普及によって、最近では働くことに地理的な要因は大きな意味を持たないという考え方が有利なように思っていましたが、本書ではデータを見る限り逆のことが起きていると述べられています。

イノベーション関連の業種は特定の地域に集まり、そこに必要な人材も集まってきます。それはどんなに通信技術が発展したとしても、人と人が物理的に接触することが新たなアイデアを求めるイノベーション産業にとって必要なことだからです。

そして、先ほど書いたようにこれらのイノベーション産業がその存在する地元の全ての産業での低学歴、低技能の者の雇用を生み出し、生活水準を向上させているのです。

それが本書のいう「年収は『住むところで』決まる」という意味です。

イノベーション関連産業が盛んな地域の高卒・低技能者の給料は、衰退産業しか持たない地域の大卒・高技能者の給料を上回るのです。

ここに書かれていることはアメリカの事例ですが、アメリカの労働市場で何が起きているのかを知ることは、今後の日本の経済政策、都市政策を考える上でも大いに参考になるのではないかと思いました。 

年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学

 
年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

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