[ま]桜の樹の下には @kun_maa
今まで満開の桜を見ても、特になんとも思わなかった。
咲き乱れる桜を見て不安な気持ちを抱くようになったのは最近のことだ。
咲き始めの桜は愛おしい。
長い冬を終えて一輪、二輪と咲き始めた桜の花は見ていて心が和んだ。
それなのに、満開に咲き乱れる桜は僕を不安にさせる。
春の息吹を全身に集めて、生命力をその全ての花から放出しているような圧倒的な生命感が僕を不安にさせる。
心がざわついて落ち着かない。
こんなことは今までなかった。
特に、薄暗い中で見る桜や夜桜がいけない。
不気味な妖しさをまとった美しさがひしひしと感じられて逃げだしたくなる。
桜の樹の下には屍体が埋まっていると書いたのは、梶井基次郎だったか。
昔は、彼の作品を読んでも理解や共感ができなかった。
いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った
しかし、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。
(梶井基次郎「櫻の樹の下には」から引用)
今なら、梶井基次郎が爛漫と咲き乱れる桜に対して抱いた不安と憂鬱な気持ちがわかるような気がする。
満開の桜の妖しい生命力と屍体を対比することで、心のバランスをとろうとした作品世界が理解できるような気がする。
僕が歳をとったからなのか、それとも心が弱っているからなのか。
満開の桜はまぶしすぎて僕を不安にさせる。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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