[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]灼熱の魂/運命を呪いつつ母性の強さを思い知らされる秀逸な映画 @kun_maa

映画で他人の人生を疑似体験することは楽しみではありますが、それは時にとても辛い体験となることもあります。この映画もそんな作品のひとつ。

灼熱の魂 [DVD] 

この「灼熱の魂」はアカデミー賞外国語映画賞にノミネート、ベネチア国際映画賞、トロント国際映画賞などで賞を受賞している作品です。
 
プールサイドで突然放心状態になりそのまま亡くなってしまった母親の遺言から、死んだと聞かされていた父親と存在すら知らなかった兄を探すことになる双子の姉弟の物語です。
母親の遺言は父と兄を探し出して母からの手紙を渡すこと。
それまでは墓石に自分の名前すら彫らないで欲しいという強い願いでした。
 
父と兄を探す旅は国境を越え時を超えて、風変わりだった母親の過去をさかのぼる旅となります。
 
母親との確執があったためか、弟は旅に出ることを拒絶し最初は姉だけが舞台となる中東の国へ。
 
物語はそこから母ナワルの回想シーンと、娘ジャンヌの母の過去を辿る旅とが交錯して描かれていきます。
母ナワルの若い時の役の女優と娘ジャンヌ役の女優の顔が似ているために少し混乱します。よく似ている女優を探したなあって感心。
そして観客もまた、ジャンヌや途中から旅に加わることになった弟シモンと一緒にナワルの生涯をたどることになります。
 
徐々に明らかになる母ナワルの壮絶な人生。
それは民族や宗教、宗派間の抗争、部族社会と人間の不寛容がもたらす血塗られた歴史を背景に理不尽な暴力の渦中にのみ込まれ翻弄されていったナワルのこれまで誰にも知られることのなかった切なく苦しい人生そのものです。

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中東の某国(最後まで国名は出てきませんが、原作者の出身地がレバノンなので恐らくレバノンの内戦時代)での宗教や宗派が複雑に絡み合う内戦状態の中、ナワルはある理由からテロ組織に身を投じキリスト教右派の指導者を殺害して15年もの間、拷問が当たり前の監獄に収監されていたのです。

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父への手紙と兄への手紙がなぜ別々でなければならなかったのか。
姉弟が最後にたどり着いたあまりにも残酷でおぞましい衝撃的な真実とは何か。
あの日、プールサイドでナワルが放心状態になったのはなぜなのか。

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この映画のすごいところはすべての真実が明らかになったときに、それまでの断片的なシーンが一気に繋がる伏線の張り方の妙にあります。壮絶な人生の追体験に加えて張り巡らされた謎と隠された真実。
 
ジャンヌとシモンとともに謎に迫っていき、真実を知った時の観客の衝撃といったら。
まさに打ちのめされるという言葉がぴったりの作品です。
 
運命を呪いたくなります。
 
そして、それでも無償の愛を抱ける母性の強さを思い知らされました。  
灼熱の魂 (字幕版)

灼熱の魂 (字幕版)

 
 
この作品は観客もジャンヌとシモンとともに真相に迫って行くことが醍醐味なので、ネタバレするとその衝撃もストーリーの素晴らしさも台無しになります。
そうならないよう気をつけて感想を書いたつもりです。
 
もし気になった方がいたら、ぜひ自分の目でナワルの人生をたどり、衝撃の結末を体験して欲しいです。そんなことを思わされた秀逸な作品。
 

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[ま]Kindleストア【120冊半額】春の光文社新書フェア開催中/4月20日まで @kun_maa

未読本が減らずにどんどん増えていきます。

Kindle本が手軽すぎてついポチポチしてしまうのに加えて、紙の本で読みたい種類の本っていうのも確実にあってそちらもホイホイ買い込んでしまうものですから手持ちの本が減るわけがありません。

そんな状況なのにKindleストアでセール中の表示を見かけると、やっぱりチェックせずにはいられない僕は買い物依存症なのかもしれません。

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【120冊半額】春の光文社新書フェア

今回ご紹介するのは春の光文社新書フェアと題して、人文・思想系から科学やビジネス書、歴史や芸術まで幅広くカバーしている光文社新書Kindle本120タイトルが半額となっているセールです。

Amazon.co.jp: 【120冊半額】 春の光文社新書フェア(4/20まで): Kindleストア

 

手軽に知的好奇心を満たすことができる新書はついつい買いすぎてしまう傾向があるのですが、まあ半額なんで気になるタイトルがあればこの機会に買っておくのもいいんじゃないかと思います。

それでは僕が気になった本をピックアップ。 

忙しい人のための「自重筋トレ」 (光文社新書)

忙しい人のための「自重筋トレ」 (光文社新書)

 
結婚と家族のこれから?共働き社会の限界? (光文社新書)

結婚と家族のこれから?共働き社会の限界? (光文社新書)

 
闇経済の怪物たち?グレービジネスでボロ儲けする人々? (光文社新書)
 
森山大道 路上スナップのススメ (光文社新書)

森山大道 路上スナップのススメ (光文社新書)

 
人体 失敗の進化史 (光文社新書)

人体 失敗の進化史 (光文社新書)

 
医療探偵「総合診療医」?原因不明の症状を読み解く? (光文社新書)

医療探偵「総合診療医」?原因不明の症状を読み解く? (光文社新書)

 
精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

 
今を生き抜くための70年代オカルト (光文社新書)

今を生き抜くための70年代オカルト (光文社新書)

 
大麻ヒステリー?思考停止になる日本人? (光文社新書)

大麻ヒステリー?思考停止になる日本人? (光文社新書)

 
検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)

検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)

 
〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

 

とりあえずこんなところで。

他にもたくさんの興味深い本が揃っているので、対象本にひととおり目を通してみるのも楽しいと思います。

だいたい1冊350円程度ですし、たとえ10冊ポチっても4000円いきませんから1回飲みに行くのを我慢すれば大丈夫な感じでしょ。

未読本が増えてもいいじゃないですか(開き直った)。

Amazon.co.jp: 【120冊半額】 春の光文社新書フェア(4/20まで): Kindleストア

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[ま]人に優しく @kun_maa

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朝の通勤時間帯の混み合うJRの駅。

大勢の人間が忙しなく行き交っている中で僕は突然声をかけられた。

京浜東北線に乗るにはどこに行けばいいですか?」

振り返るとひとりのお婆さんが僕をじっと見つめながら、もう一度同じ言葉を繰り返した。

 

最初に思ったのは「なんでこんなにたくさん人がいるのに、よりによって僕に声をかけるんだよ...」ってこと。

そう、僕も仕事に行くために急いでいたんだ。

たぶん不愉快な気持ちが思いきり顔に出ていたと思う。

 

それでもお婆さんは僕を見つめてもう一度繰り返す。

京浜東北線に乗るにはどこに行けばいいですか?」

「そこのエスカレーターで下に降りて左に改札がありますから!」そう早口で言いながら僕は足早にその場を去ろうとした。しかしお婆さんは僕の言ったことを理解していないようだった。きっと嫌がらせのように早口でぞんざいな言い方だったから。

「エレベーターで上に行くんですか?」背後から僕に向かってそう問いかけるお婆さんの声が聞こえた。

そうだった。エスカレーターの隣にはエレベーターがあったんだ。よく聞き取れなければ勘違いしてしまう。

そのまま聞こえなかったふりをして行ってしまおうかと思った。

しかし僕は迷惑そうな顔で振り返り、「違う違う、そこのエスカレーター!下に降りて左に改札があるから!」とお婆さんに邪険な言葉を投げつける。

「切符はどこで買えますか?」

「(ちっ!)改札の横!」

そんな横柄な態度の僕に対してお婆さんは、深々と頭を下げて「ありがとう」と言ってエスカレーターで降りて行った。

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お婆さんの丁寧で優しげな「ありがとう」という言葉を聞き、深々と頭を下げる姿を見たとき僕はハッとした。

なんで自分はこんなにも不機嫌にお婆さんに接してしまったのだろうと。

たしかに僕は急いではいたけれど、電車の乗り場を教えるくらいで遅刻するような切羽詰まった状況でもなかったのに。

もし仮に遅刻しそうだったとしても、ちゃんと丁寧に教えてあげて遅刻すればいいじゃないか。遅刻したところで死ぬわけでもあるまいし。

 

人に優しくありたい。僕は今までそう思っていた。

でもそんなものはほんの少しの慌ただしさという言い訳の前に偽善の仮面をかぶる余裕すらないちっぽけなものでしかなかった。偽善の先っちょにも引っかからない優しくありたいという醜悪な嘘。

僕のお婆さんに対する態度がすべてを物語っていた。

 

自分に余裕がある時に他人に優しくできるのは簡単なことだ。

余裕がない時にこそ本性が現れる。

改札の場所がわからず切符売り場にも行けないお婆さんに対して、あからさまに迷惑そうに接したこの時の自分の姿が本当の自分。

実に情けない姿だった。何が人に優しくありたいだ。人間性が薄すぎて反吐がでる。

 

駅の雑踏の中、慌ててお婆さんの姿を探した。でもその姿はもう僕の視界から消えていた。あのお婆さんはちゃんと切符を買って京浜東北線に乗れたのだろうか。

あんな不愉快極まりない態度をとった僕に対して頭を下げて丁寧にお礼を言ってくれたお婆さん。

あのお婆さんのような心根からにじみ出る優しさを僕も身につけたいと思った。

どんなときでも。誰に対しても。人に優しくありたい。

どんな時でもブレない強さを伴った優しさを身につけたい。

そんな気持ちを思い出させてくれた朝のひとコマ。恩送り。

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[ま]タイの不思議な霊(ผี)体験 /家を守るピー・クマントーン(ผีกุมารทอง) @kun_maa

おっす!霊感はないけど霊体験はそれなりにある @kun_maa です。

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タイには、ピー(ผี)と言って幽霊というか精霊というか、まあ表現の仕方はちょっと難しいのですが要はそういった霊的なものが至る所にいると信じられています。なんとなく日本の八百万の神みたいな感覚でしょうか。

タイの街を歩いているとよく見かける小さな祠、あれもピーを祀ったものです。

バンコクで有名な旧そごうの近くにあるエラワン・プームなんかもそうなのかな。

あれも確か工事現場で事故が多発してそれを収める為に造ったはずだけど、でも祀っているのはヒンドゥー教の神様か。ピーじゃないか。どうなんだ。

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僕がハマっているタイのお守りプラクルアンも、実は仏教とピー信仰の融合したものだと考えられています。

そんなピー信仰が今も日常生活の中に息づくタイで僕は以前にも不思議な体験をしました。 

kun-maa.hateblo.jp

 

ピーには、いわゆる妖怪や悪霊のような人に害を及ぼすものから土地神のようなものや木の精霊、家を守る精霊などホントいろいろな種類がいます。これが一口に幽霊だって括ることできない理由。

 

今回は僕がタイで新築の家に泊めてもらったときの体験。

その家のリビングの高いところに子供の形をした置物があり、水とお菓子が供えてあったのでなんの神様なのかなと思い家主にたずねてみました。

するとお寺から男の子のピーを借りてきて家の中を守ってもらっているとのこと。

お寺ではピーまで貸してくれるのかとちょっと驚きましたが、きちんとお参りだけはしておきました。

 

その日の夜中、2階の部屋で寝ていると誰もいないはずの1階のリビングで、時折バタン!とかガン!とか音がしていました。

何の音?って住人に聞くと、ピーが遊んでいるんだろうって...え?マジか。

 

翌日は1日中、家主や近所に住む家族と一緒にお寺や市場を訪れてすごし、市場でムーヤーン(豚肉の串焼き)とカオニャオ(もち米)、その他諸々のおかずを買って夜に家に帰りました。

 

買ってきた荷物をリビングのテーブルに置きひと息ついた時、荷物の奥の方にあったムーヤーンの袋だけが床にポトンっと滑り落ちました。

手前にも荷物がたくさんあるのになんで奥にあったムーヤーンだけが突然落ちたのかとっても不思議でしたが、家主は「男の子のピーがムーヤーンを食べたがっているのかもしれない」と普通の顔で言いました。普通のなんでもない出来事のように。

ピーがムーヤーンを食べたがっているならまずお供えをしないといけないのかなあと思いましたが、お供えをしなくてもピーの名前を呼んで(なんと名前がついているのですよ!)「一緒に食べよう」と声をかけてから食べ始めれば問題ないそうです。

 

まずムーヤーンを皿に移してからピーに声をかけ、次にビールを開けてグラスに注ぎました。喉がカラカラだったのでムーヤーンをつまみにしてビールを飲もうと思ったんです。

さて、まずは最初の一杯だよなと口元にグラスを運ぼうとしたときに異変は起こりました。グラスを持つ手が急にガタガタと震えだしたのです。

それまでなんの違和感もなく普通に使えていた右手が、グラスを口に近づけようとすればするほど激しく震えてとてもビールが飲める状態ではありません。

 

グラスを口から遠ざけると震えが小さくなり、グラスをテーブルに置くと震えが止まります。試しに他のものを持ってみましたが手は全く震えません。

ビールを飲もうとするときだけ、グラスを持った手が震えて止まらなくなるのです。

 

それを見ていた家主が「ピーがビールを飲みたがっているんじゃないかな?」と言いました。しかも真顔で。よくそんな真顔で怖いこと言うなって思ったんだけど彼女らにしたら日常の出来事のようなのです。アメージング・タイランド

純日本人の僕はそんなバカな......とは思いましたが、とりあえずこのままだとビールが飲めないので他のグラスにビールを注ぎ、お供えをしました(この間、手の震えは全くなし)。

 

その後、再びビールを飲もうとしたら最初よりは震えが小さくなりましたが、まだガタガタと震えてとても飲めません。

「お寺から連れてきた子供のピーは4人いるんだよ。まだ1杯しかあげてないから......」と言う家人の言葉に耳を疑いつつも、毒を食らわば皿まで的なヤケクソ気分で「全部飲んでいいです!でも僕にも少し飲ませてください!」と手に持っていたグラスをテーブルに置いて言いました。

 

しばらくそのグラスを見つめながらピーが満足するのを待ちました。

2分経ちました。ビールを飲もうとするとまだ少し手が震えます。

5分経ちました。ビールを飲もうとしても、もう全く手は震えませんでした。

どうやらこの家の子供のピーは僕と同じでビールとムーヤーンが好物のようです。

 

思い返すほどになんとも不思議な体験でした。

その後、滞在中にビールを飲もうとしても手が震えることは二度とありませんでした。

夜中に1階から不思議な音がすることはしょっちゅうでしたけど。

もしかしたら、突然家にやってきた異邦人の僕をピーがからかったのかもしれませんね。

 今だから言うけど、子供のくせにビール飲むなよな!まったく。

 

この子供のピーのことをタイ語でピー・クマントーン(ผีกุมารทอง)と言います。

日本で言うと「ざしきわらし」みたいな感じでしょうか。

昔は流産した子供の遺体を使ってクマントーンのお守りを作ったりしたという、かなり恐ろしい話を聞いたことがあります。

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[ま]なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか(ロメオ・ダレール 著)/世界の無関心が見捨てた80万人の命 @kun_maa

アフリカの中央部にある人口過剰な小国ルワンダ。戦略的に特に価値はなく、これといった資源もないちっぽけな国である。そのちっぽけな国で80万人もの人間がたったの100日間で虐殺された。

なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記

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本書の著者はこの大虐殺が始まる数ヶ月前の1993年8月から志半ばで現地を後にすることになった1994年8月までの1年間、ルワンダ駐留国連PKO部隊の司令官を務めたカナダの軍人ロメオ・ダレールである。

PKOの司令官だった彼は、自分の赴任期間中にルワンダで起こってしまった大虐殺を手をこまねいて見ていた訳ではない。

なんとか事態の収拾をはかるため、大虐殺が発生しないために懸命の努力を続けた。しかし国連は彼に必要な部隊や装備などのリソースも、積極的に事態の収拾に当たることができる指令も与えなかった。

本書にはダレールがどのように考え、何を行おうとしたのか、そして国連や事態を牛耳ろうとする大国が彼に何をさせず、どんな邪魔をしたのかが克明に書かれている。

 

そのボリュームは資料などを除いた本文だけで、2段組484ページにもわたる。

あまりのボリュームと詳細な内容、そして専門用語や翻訳書独特のわかりづらさに何度読了することを挫折しそうになったことか。

 

本書だけではルワンダで起きたことの全体像や細かい部分すべてはわからない。あくまでも著者の視点から見た局地的な文章だから、当時のルワンダの状況などについてある程度の知識がないと難解でもある。

ただ、そのような点を差し引いても本書から伝わってくる現地ルワンダの死と隣りあわせの臨場感はすごい。そして国連という組織のあり方の問題点や各国の無関心、大国のエゴなどが絡み合ってダレールの報告が握りつぶされ、必要な措置は遅々として進まず、なす術もなく殺されていく多くの人々と標的にされるPKO部隊の姿に読んでいてあまりにも悔しくて拳を握りしめ目は涙でうるんだ。

 

ルワンダで虐殺が発生した背景を知るにはベルギーの植民地時代である20世紀前半までさかのぼる必要がある。

ベルギーはルワンダを植民地支配するにあたってこの国に暮らす2つの民族、少数派であるツチ族と多数派であるフツ族を対立させツチ族によるフツ族支配社会を作り上げた。そうすることで自らの労力は最小限にとどめて多くの利益をルワンダから得ていたのである。

その後、フツ族の民衆蜂起によりツチ族支配は終わりを告げ、フツ族によるツチ族の虐殺、一部のフツ族のクーデターなどを経てある程度の安定期はあったものの、民族間の憎しみや軋轢など消えることのない傷跡を残すことになった。

 

その民族間の対立にフランスやベルギーが首を突っ込んだりすることで、事態は余計複雑に、そして高まった民族間の圧力は政治的不安定さを引き起こし、フツ族過激派によるツチ族の大虐殺へとなだれ込んでいくことになるのである。

その間の事態の経緯は逐一、ダレールから国連に報告されていた。またBBCを始めとする報道機関によってもこの虐殺の発生は世界に知らされていた。

しかし世界はその虐殺を知り、止める力を持ちながらもルワンダの人々を救おうとはしなかったのである。救えなかったのではなく救おうとしなかった。この違いは大きい。

 

著者は次のように書いている。

暴力的な過激主義は数十年間に及ぶ武力による平和の中で生まれたのだが、これはフツ・パワー(フツ至上主義)がその最終的解決を実行に移す前に、抑え込むか根絶することもできたものだ。自分たちの無関心や内輪もめ、混乱や対処の遅れによって私たちは、ジェノシデールを揺さぶって、ジェノサイドを阻止する機会を何度も逃してしまった。(中略)私たちは内戦の再開やジェノサイドを防ぐことができただろうか?端的に言えば、イエスだ。もしUNAMIRが、第一週目に要求した程度の控えめな部隊と能力の増強を得ていたならば、私たちは虐殺を止めることができただろうか?間違いなく止めることができただろう。それにより国連軍の犠牲者を出すリスクを負うことになっただろうか?そのとおりだろう。しかし、兵士たちや平和維持活動貢献国は、人命や人権を守るための対価を支払う覚悟をすべきである。もしUNAMIR2が予定どおりに、また要求どおりに展開されていたら、長期化した虐殺期間を短縮しただろうか?そのとおりだ、もっと早く虐殺を止めていただろう。(P.476)

 

もちろん過去の植民地支配による経緯はあるにしてもルワンダ人によるルワンダ人への大虐殺の究極的な責任はそれを計画し、命令・実行したルワンダ人にある。

それでも現場にいてこの事態を防ぐことができたはずだと自分を責めている著者は、この虐殺の発生は危機にさらされた人びとの助けを求める声に耳を傾けることができなかった人類の失敗の物語であると言い、次のように述べている。

国連とは国際社会を象徴する存在にすぎない。国際社会はそれぞれの国益を越えてルワンダの利益のために行動することができなかった。何らかの対応をすべきだということについてはほとんどの国家は同意していたが、どの国も、この問題に対応すべき国家は自国ではないという言い訳を用意していた。その結果として国連に、悲劇を防ぐための政治的意思と物質的手段が与えられることはなかったのである。(P.478) 

 

結局世界の無関心はこの地域における紛争を止めることができず、1994年から2003年に再燃した虐殺までの間に、コンゴ(旧ザイール)を中心にこの地域での死者は400万人と見積もられている。ルワンダでの失敗を世界は活かすことができず、悲劇を止めることができなかった。

それでも、著者はこのような問題を解決することができるのは世界の平和と安全を維持する責任を負い国際社会に支えられ国連憲章の基本原則や世界人権宣言にのっとった国連しかないと述べている。ただし、そのためには国連は生まれ変わらなければとも。

この国連の改革は官僚機構の弊害のみならず、加盟国の役割を再考し、目的の更新に責任を負うようにしなければならないと。

最後に述べられている著者の言葉が重たく心に突き刺さる。

本書で私は何度も問いかけてきた。「私たちは同じ人間なのだろうか?あるいは人間としての価値に違いがあるのだろうか?」と。間違いなく、先進国で暮らす私たちは、自分たちの命の方が地球上の他の人びとの命よりも価値があると信じているかのような行動をとる。あるアメリカ人士官は、80万人のルワンダ人の命はアメリカ人兵士10人の命を危険にさらすにしか価しない、そう言って恥じるところはなかった。またベルギー人は、兵士が10人戦死した後で、ルワンダ人のためにベルギー人兵士の命をこれ以上1人たりとも危険にさらすことなどできないと主張した。私がたどりつくことのできた唯一の結論は、私たちの中に人間性を注ぎ込むことが是非とも必要だということである。もし私たちがすべての人間が同じ人間であると信じているのであれば、私たちはどのようにしてそれを証明しようとするだろうか?私たちの行動によってしか証明しようがないのだ。第三世界の生活状況を改善するために使う資金を用意し、エイズのような恐ろしい問題を解決するために時間と労力を費やし、兵士の命を人間性のために犠牲にする覚悟をすることによってである。(P.483〜484) 

 

我々はこれからも第三世界の人々に無関心で居続けるのか。

それとも自らの生活や国益を犠牲にしても、他国で起きている人権問題解決のためにリスクを負い、自らの血を流す覚悟をするべきなのか。

本書はとても重たい選択を皆に突きつけているように思えてならない。  

なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記

なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記

 
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[ま]モスバーガーの「菜摘(なつみ)」が糖質制限ダイエット中の外食にちょうどいい @kun_maa

断糖ダイエットと禁酒から、かなり緩い糖質制限状態へと移行してすでに1か月以上が過ぎました。クラフトビールの飲み過ぎや飲んだ後の炭水化物の重ね食いなどのせいで日により体重が上下することはありますが、結果的にはほぼ厳しいダイエット中の体重をキープしています。

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そうはいってもやはり何でもかんでも無節操に糖質を摂ることを自分に許しているわけでもなく、外食やクラフトビールを飲むとき以外はほとんど糖質を含めた炭水化物を食べない生活をしています。

困るのはふらっと街に出たときの外食。炭水化物を極力摂らずにたんぱく質や脂質だけの食事にしようと思うと入れる店が限られてしまいます。

定食屋でご飯を残しておかずだけ食べるのも気が引けますし、最初からご飯抜きでってお願いして同じ値段払うというのもなんだか損した気分になってしまいますし(せこいか...)。そうかといっていきなり焼肉やステーキというのも財布に優しくありません。

 

そんな時にブログ友達の奥野さんから教えてもらったのがモスバーガーの「菜摘(なつみ)」です。

ハンバーガー、ラーメンやつけ麺などの外食のレポとか書いてたくせに僕はまったく菜摘のことを知りませんでした。名前の響きがいいよね「なつみ」ってさ。

 

出張先で昼食に困り立ち寄ってみましたモスバーガー

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「菜摘」ってバンズの代わりにレタスで具材を挟んだハンバーガーなんですよ。知ってましたか?ああ、知らなかったのは僕だけですか。そうですか。

種類は全部で7種類。

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僕が注文したのは「モスの菜摘(なつみ)テリヤキチキン」と「モスの菜摘(なつみ)海老カツ」の2種類。

厳密にいうとテリヤキのタレには砂糖が、海老カツの衣にはパン粉や小麦粉が入っているでしょうから断糖にはならないんだけど糖質制限程度にはなるんじゃないかな。

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モスの菜摘(なつみ)テリヤキチキン

こちらが「モスの菜摘(なつみ)テリヤキチキン」。

バンズの代わりにレタスでテリヤキチキンを挟んでいて、オニオンスライスやカロリーハーフのマヨネーズが使われています。ちょっと食べにくいけどレタスのシャキシャキ感とテリヤキチキンの肉感と甘辛さがよく合っていて美味しい。

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バンズを使っているテリヤキチキンとどれくらい栄養成分が違うかというと次のような感じ。

モスの菜摘(なつみ)テリヤキチキン

カロリーは 184kcal で炭水化物はわずか 7.7g です。

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テリヤキチキンバーガー

対して普通のテリヤキチキンバーガーは 300kcal で炭水化物が 30.8g と違いが一目瞭然。

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モスの菜摘(なつみ)海老カツ

こちらがモスの菜摘(なつみ)海老カツです。

バンズ代わりのレタスにサクサクの海老カツとキャベツの千切り、タルタルソースが挟まれています。肉感はないもののこちらも美味しい。

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バンズを使っている普通の海老カツバーガーとの栄養成分の違いは次のとおり。

モスの菜摘(なつみ)海老カツ

さすがに揚げ物だけあってテリヤキチキンに比べるとカロリーも炭水化物も多いです。それでもバンズで挟んだものに比べれば違いは歴然。

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海老カツバーガー

上の菜摘海老カツのカロリーと炭水化物の量が可愛らしく見えるほど。やはりパンを使っているかどうかというのはかなりの差ですね。

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というわけで、糖質制限中に外出先で昼食を食べなくてはならない時にはモスバーガーの菜摘(なつみ)を目指せって話です。

美味しいし満足感も十分あるんで、ステーキ屋に飛び込んで散財したり、ヤケになってラーメンを喰らったりすることなく迷わず菜摘に食らいつくのが吉。

コスパもいいと思います。コーヒーも美味しいしさ。

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