読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。                     

[ま]「子供を殺してください」という親たち/親子の問題だと突き放せるほど楽観的な問題ではない @kun_maa

衝撃的なタイトルの本である。しかし著者はこのタイトルを決して奇をてらったわけではないと言い、本書を書いたきっかけについて次のように述べている。

家族の問題に介入する中で幾度も耳にするようになったこの言葉に、非常に危機感抱いたからです。私はこの言葉の背景に、「面倒なもの」「危ないもの」「厄介なもの」を徹底して排除しようとする、家族そして社会の姿が見えるような気がしています。本当にそれでいいのだろうか?と強く思ったことが、筆を執るきっかけとなりました。(P.280 あとがき) 

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

 

 

著者の職業は、病気の自覚のない精神を病んだ人を説得して医療につなげる「精神障害者移送サービス」である。

全体の半分を占める第1章「ドキュメント」では、著者が実際に日々の仕事の中で出会った事例の中から複雑化した問題の代表ともいえるケースを掲載している。

 

登場するのは過度の教育圧力に潰れたエリートの息子、アルコール依存症で親を刃物で切りつけた男、幼い頃から粗暴で家庭内暴力を振るい母親との共依存関係にある長男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘などなど、親はもちろん病院でも扱いきれずに、第三者への犯罪行為に発展するすれすれのところで刑事事件の一歩手前にある「グレーゾーン」の人たち。

 

親子の間での殺伐とした殺し合いのような状況。破壊された関係性と共依存の実態。

助けを求めて保健医療機関に駆け込んでも「グレーゾーン」であるがゆえに救われることのない地獄のような日々。

そして保健医療機関に助けを求めることさえできない家族もいる。

「子供を殺してください」という親は身勝手に思えるが、身勝手だから当然の報いだと片付けてしまうにはあまりにも過酷な現実である。

 

第1章「ドキュメント」は、評論家的な高い位置から物申すという視点ではなく、まさに現場で対象者の親や兄弟姉妹と一緒に親身になって奮闘している者としての視点で描かれており、その臨場感や著者の無念さなどの感情溢れる文章にグイグイ引き込まれていく。

親のこれまでの子供に対する向き合い方に根本的な問題があるのだろうという事例が多いのだが、同じ親に育てられた兄弟姉妹は普通に生活していたりするので、もしかしたら対象者本人のパーソナリティ障害という問題と親の行動の組み合わせの悪さのような関係があるのかもしれない。

スポンサーリンク

 

第2章以降は、なぜこれら家族の問題がなかなか解決されないのかを精神保健分野の現状と問題点について法制度面も含めて解説し、著者なりの解決策の提言をしている。

 

これを読むと、第1章に登場した事例に限らず自傷他害の恐れのある重度かつ慢性化した難治性精神疾患の患者が一定数いることは統計上もわかっていることであり、家族内の問題だからと知らん顔を決め込めるほど楽観的な状況ではないことがよく分かる。

 

著者も本書の中で再三述べているが、もちろんすべての精神疾患の患者を病院に収容しろというわけではない。社会的入院によって社会生活を送れるはずの患者が長期入院を余儀なくされる状況は改善されるべきである。

しかし患者を早期に退院させ、地域や社会で受け入れる方向に移行している国の施策の流れの中で、本当に入院を必要とする患者が社会に放り出され、その受け皿となるものが十分に整っていない現状にもっと危機感を持った方がいい。

 

適切な行き場を失った第1章に登場するような対象者が、家族に向かっていた狂気による殺意を第三者に向ける可能性がないとは言い切れないのであり、だからこそ件の親たちも途方に暮れて人様を傷つけるくらいなら「子供を殺してください」と言い出すのだから。

 

自分も本書に登場する親たちを非難できるほど立派な親ではない。むしろここに登場する親の方により近いダメ親かもしれない。

僕に心を閉ざしてしまった子供の話をちゃんと聞こうと向き合ってこなかった自覚もある。

本書を読んでまず思ったのは自らの子供に対する向き合い方をもう一度しっかりと考え直し、今からでも子供に全力でぶつかっていこうということだった。本書の表現を借りれば、子供部屋に怖くて入れなくなってからでは遅いのだ。

 

親として自分の子供にしっかりと向き合うのは当然として、社会全体での受け皿という体制の整備も早急に取り組まなくてはならない課題である。

公的、医療的な援助も必要だが限られた財源、人材でどのように対処していけばいいのか。著者の提言である警察官OBを活用したスペシャリスト集団の設立も素晴らしいとは思うが、実現まではなかなか困難な道のりだと感じた。

 

そして、今日もどこかの家庭で事件は起きている。 

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

 
スポンサーリンク

このブログを気に入っていただけたら、ちょくちょくのぞきに来ていただけるとうれしいです。そして、とっても励みになります。

RSS登録していただける方はこちらのボタンをご利用ください。 

follow us in feedly