僕は自分のうつ病の症状がよくなってきてからは、うつ病に関する本をなるべく読まないようにしていました。
理由は単純にその手の本を読むと自分の辛かったときのことを思い出してしまうのが嫌だから。
では、なぜこの本を手に取ったのか。
それはタイトルに魅かれるものがあったからです。「放浪記」という表現に。
ノンフィクション作家である著者が長年の不定愁訴や呼吸困難、激しい動悸などの身体症状に悩まされた挙げ句、その原因がうつ病であったことを知り、いい医師と出会うまでの顛末を時にユーモラスに、でも切実な問題としてうつ病の診断までの紆余曲折な展開といい精神科医と出会うことの大変さについて書いています。
その様子は、まさに「放浪記」です。
実際に読んでみて暗い気持ちにならずに素直に入り込めたのは、著者の文章に対する姿勢のおかげかもしれません。
僕自身も身体症状から不調が始まったので、何の病気なのかがわからず著者ほどではありませんが内科や耳鼻科などを転々としていろいろな検査を受けました。
最初に身体症状が出た人の多くは同じ経験を持っているのではないでしょうか。
著者は自分の経験が同じように苦しんでいる人の役に立てばという思いで本書を綴ったといいます。
この本を読むとうつ病というやっかいな病気について、また、まともな精神科・心療内科に出会うことの難しさと大切さについてよくわかります。
一発でいい医師に出会えた僕なんか幸せな方だと思いました。
著者自身の経験に加えて、他のうつ病患者への取材や主治医との対談(さすがノンフィクション作家だと思いました)、自分なりに考えたうつ病とのつき合い方についても書かれていて、それらはとても参考になります。
変に暗くならず、かといっておちゃらけているわけでもなく真摯にうつ病と向き合う姿勢に勇気づけられます。
最後の章に書かれている「うつ病を生き抜くための六ヶ条」というものがあります。
一見、人生をあきらめることを推奨しているようにも見えますが真意はそんなところにはなくて、実はとても大切なことではないかと思います。
ここではタイトルだけをご紹介しましょう。
もし興味を引かれる部分があれば、実際に本を読んでみることをおすすめします。
その1:しょせん自分はたいした人間ではないということに気づいたほうがいい。
その2:仕事だけに人生のすべてを賭ける生活はもうやめよう。
その3:お金持ちになれば、すべての問題が解決すると考えるのは大誤解だ。
その4:人間関係における不良債権を、この際、思い切って整理する勇気を持とう。
その5:自分の周囲に起きた悪いことを、すべてうつ病のせいにしてはいけない。
その6:熟年女性のうつ病患者への、ちょっとお節介なアドバイス。
僕は、その1、その2、その5の主張にとても共感しました。
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