[ま]私が虫を食べるわけ/キワモノではない昆虫食の魅力を熱く語る本 @kun_maa
本の帯に「美人すぎる食虫女子、世界を食べる!だっておいしいのよ?」と書いてあり、いかにもキワモノっぽい本のように煽って売ろうとしているかのように見えるところがいきなり残念。
だが、そんな帯の文句とは裏腹に著者の食虫体験をクローズアップしているだけの内容にとどまるのではなく、昆虫の持つ食材としてのポテンシャルについて、食糧全体の課題や文化、地球環境などの様々な視点を通して説いている意欲的な本である。
これは意図的な訳文なのか、それとも原文がこういうくだけた文章なのかはわからないけど、文章自体ちょっとおバカふうな印象の体裁。
虫を食べるという少なからず抵抗感のある行為について語るため、少しでも受け入れてもらいやすいような表現としての戦略なのかもしれないが、ちょっとやりすぎの感はある。内容はいたって真面目なのだから文体ももう少し真面目でもよかったんじゃないかなって、このどうしようもない帯のセンスと合わせて残念に思うのは僕だけだろうか。
著者は食肉にまつわる多くの問題点(現在の家畜の大量飼育が地球環境に与える影響や工場式家畜経営の課題など)、人間の進化における虫食の果たしてきた役割、昆虫の優れた栄養面や昆虫食の文化的な側面など多方面にわたる多様な切り口から、様々なエビデンスを集めてきてわかりやすく説き明かしながら、虫を食べることがどれだけ理にかなっていることなのか、その素晴らしさを滔々と訴えていく。
その根底にあるのは、もちろん自分が知ってしまった「虫の美味しさ」である。
そこで止まって個人的に虫食愛好家として生きるのではなく、虫の食材としてのポテンシャルを様々な分野の根拠を学びながら広く世間に訴えて続けているところが彼女のすごいところだ。本当に虫が好き(食材として)なんだろうなって熱いものを感じる。
たとえちょっと文体がおバカっぽくっても熱意は伝わる。そして虫食に対する最大の抵抗勢力である心理的な抵抗を少しでもなくしたいと頑張っているように見えるのだ。
僕は本書を読む前から昆虫食の美味しさと心理的な抵抗について体験していたので、とても興味深く彼女の主張を読むことができた。
本人は猛烈に昆虫食推しなんだけど、嫌がる人に決して無理やり押し付けようとしない点に好感が持てるし、巻末の「食用になる虫リスト」と「美味しい虫レシピ」はとても魅力的。
僕自身は、このリストとレシピを見てまた食べてみたい虫が増えてしまったのだが、この本を読んで一人でも多くの人が虫食に興味を持ってくれたらうれしいなって思う。
例えば、本書には子どもが喜んで虫を食べる話が出てくる。虫に対する偏見や恐れが大人に比べて薄いから。
そう、心理的な抵抗さえなくせば虫食っていう楽しくて美味しい世界が目の前に広がるかもしれないのだ。
著者の次の言葉のように。
虫は美味しくいただけるんだって知ったとき、まったく新しい可能性が目の前に開けたような気がして、やたらと嬉しくなったっけ。誰彼かまわずこう話しかけたくなったの。ねえ、そこら中にいっぱいいるあの小っちゃくて色とりどりのやつ、あれって見た目がカッコイイだけじゃなく食べ物にもなるの、知ってた? (P.10から引用)
最後に著者がYouTubeで虫を調理しているものを2つ載せておく。
虫がダメな人は見ないほうがいいと思うが、ちょっとでも興味がある人は是非見てみてほしい。そんなにグロくはないから。
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