非常に上手いタイトルの本だと思う。
多くの人は、日々の生活が苦しいなあ、仕事が嫌だなあ、人生を変えたいなあとか、なにか1つや2つはそんな類のことを思っているんじゃないかと思う。100%満足している人生をすごしています!なんて人はそんなにいるとは思えないから。
そんなところに「人生の9割は逃げてもいい」なんてタイトルが目に飛び込んできたら、絶対に目を止めるはずだ。
僕も、そんな人間のひとり。僕がこの本を買った当時は、まだ本屋で平積みされていて、どうやらけっこう売れていたらしい。今はどうだか知らないけれど。
タイトルと帯に書かれた言葉に興味を覚えて、中身も確認せずに購入してしまったのが運の尽き。しばらく積読状態だったのだが、ふと読み始めて心底がっかりした。
この本が売れていたってことは、たぶん多くの人は仕事や人間関係から逃げずに頑張らなくてはいけないって思っているからなんじゃないかと思うけど、そういう考え方に縛られずにもっと自由に自分のやりたいことをやっていいんだよってメッセージはすごくまともで素晴らしいものだと思う。
この本のそういう方向性は確かに魅力的だとは思うんだけど内容がねぇ・・・。
読み進めるうちに反吐が出そうになるくらい凡庸でありきたりだってことがよくわかる。
個別の部分を拾い出して抜き書きすれば、「おお!いいこと言うなあ」って思うかもしれないけど、なんだかすべてがどこかから拾ってきたものを繋ぎ合わせたような薄っぺらい中身と、無責任な煽りに終始していて正直うんざりする。
例えば、嫌なことから逃げ出すってことに関して、すべてのことは自分で決めるんだってことを主張しておきながら、その先に描いている理想像は、著者の理想とする生活であり世界であるために、それを手に入れるためには意識高いコミュニティに染まることを推奨している。それってなんか違うんじゃないの?って思う。
自分の頭で考えて、生きたいように生きるって、別にセレブになることが目的じゃなくてもいいはずでしょ?なんで自分の頭で考えて生きることの先に、意識高い系の人たちとの密接な付き合いが必須になってくるの?っていう違和感。
また、自己犠牲に対してはこれでもかってくらい全否定だけど、他人には頼れって強調している点なんて一方的すぎてひどいよなあって笑っちゃう。
挫折の連続で自分のことをダメ人間だと思い込んでいたという著者。学生時代はいじめられ続け、中学校、高校では計5回の転校をしたという。おまけに留学先の大学も中退、アルバイトも長く続かず、就職もできなかったと自分の経歴を書いている。
この経歴が本当かどうかは知らないけれど、完全に元ダメ人間でしたアピールをした上で、逃げて逃げて逃げ続けたおかげで、今では好きなことしか仕事にしていないのにこんなにお金があって素敵な生活をしていますっていうストーリーの流れが、完全にキャリアポルノ層をターゲットにした無駄な自己啓発本にしか思えない。
ラクシテカネモウケタイ・・・ってね。
あえて本のタイトルになぞらえて言うなら、9割の人は読まなくてもいい本。
たぶん、読んでもその場での高揚感は多少感じるかもしれないが、実際には何も得るところはなく、この本自体は著者の主宰するセミナーに誘導するための道具だねって感じた。
この本を読むなら、その時間で定番と言われる次のような自己啓発本を読んだ方がずっといいと思う。 読後に「金返せ!」って思ったのは久しぶりだ。
- 作者: ナポレオンヒル,Napoleon Hill,田中孝顕
- 出版社/メーカー: きこ書房
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