ひょんなことから奈良の女子高校で臨時教員をすることになったイマイチ冴えない男が、鹿に話しかけられたところから、日本を守るという壮大な物語に巻き込まれていく。
雌鹿は相変わらず渋みのある中年の声で、諭すように語った。
「いいかい、先生。先生は選ばれたんだ。選ばれたからには、きっちり役目を果たしてもらわないといけない。もしも役目を果たさないと、世の中が大変なことになる。”運び番”の任を全うするんだ。近いうちに先生は京都に行く。そこで、伏見稲荷の狐から大事なものを渡される。もっとも、実際は女から手渡されるだろうが」
女子高校を舞台にした日常の描写は、冴えない男性教師の物語としても楽しめるのだが、そこにあり得ない壮大な物語が絡まり合い、不思議でおかしくて、おもしろい小説を作り上げている。
訳もわからず鹿の”運び番”に選ばれたことで、主人公は京都から奈良に移されるべきあるモノを手に入れなければならないのであるが、それがどんなモノなのかがわからない。
それは「目」と呼ばれたり、「サンカク」と呼ばれたり。
読者にも最後までそれが何かはわからない。
しかし、刻一刻と期限は迫り、世の中が大変なことになるという予兆も現れ始める。
ドキドキする。
そして、学園モノとしての要素も負けていない。
勘違いの末に、主人公はある大会で弱小剣道部を優勝させなくてはならないハメになるのだが、その大会のシーンは読みながら手に力が入るほど引き込まれた。
涙が出そうなくらい感動した。
随所にちりばめられたユーモラスな表現と、絶対にあり得ない話がもしかしたらあるんと違うか?と思わされるほど引き込まれていくストーリー展開は見事としか言いようがない。
著者の万城目学は「プリンセス・トヨトミ」を書いたことでもよく知られているが、なんていうか、あり得ない話を笑いとともにあり得るかもと思わせる天才なんじゃないかと思っている。
果たして先生は無事に”運び番”の役目を果たすことができるのか、日本を守ることができるのか、そして鹿にあることをされた彼らの運命は?
最後まで気が抜けないおもしろさであることは間違いない。
そして、ちょっと切ないラストも好きだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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