[ま]「鴨川ホルモー」/ホルモンじゃないよ「ホルモー」オニが京都を駆け巡る鮮やかな青春小説 @kun_maa
万城目学のデビュー作にして、第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。
それがこの「鴨川ホルモー」だ。
山田孝之主演で映画化もされているので、知っている人は知っているだろうけど知らない人は「ホルモー」とはなんぞやと思うだろう。
ちなみに、僕は映画の方は観ていない。
だから、とりあえず「ホルモー」とはなんなのかを知りたくて読み始めた。
しかしこれが、なかなか教えてもらえない。
登場人物たちも「ホルモー」とはなんなのかを知らされることなく話はどんどん進んで行くので、当然読者も知る由がない。
「はじめに」には次のように書かれている。長くなるが引用しよう。
きっとみなさんはそんな言葉、ご存知ないことと思う。ひょっとしたら、万に一つ、耳にしたことがある、それに似た雄叫びを実際に聞いたことがある、という方もおられるかもしれない。しかし、意味まではご存知ないはずだ。もっとも、それは仕方のないことだ。なぜなら、この「ホルモー」という言葉の意味、さらにはその言葉の向こう側に存在する深遠なる世界を知るためには、何よりもまず"ある段階"に達する必要があり、いったん"ある段階"に達したのちには、とてもじゃないが、他人には口外できなくなってしまうからだ。いや、正確には口外する気もなくなる、というべきか。こうして「ホルモー」という言葉は、少なくとも先の大戦以降数十年の間、さらにはそれ以前ー大正、明治、江戸、安土桃山、室町、鎌倉、平安の時代においてー知る者だけが知り、伝える者だけが伝え、かつての王城の地、ここ京都で、脈々と受け継がれてきた。
「ホルモー」がなんなのか、俄然気になるでしょ?僕はもう気になって気になって...
しかし読者は「ホルモー」とはなんなのかを知る前に、バリバリの青春小説(バリバリって死語ですか?)の世界に引きずり込まれていくことになる。
このへんのストーリー展開はさすが万城目学である。
まずその奇抜なタイトルで惹きつけて、本題に入る前の前段部分で読者を虜にするその筆致力には感服させられる。
この前段部分で登場人物をしっかりと描きこんでいるからこそ、本題部分の、ある意味荒唐無稽な物語における現実と虚構の境目がにじんで曖昧となり、あり得ないのにもしかしたらあるかもしれないと夢中にさせられることになるのである。
物語の舞台は京都。そして実在する大学が4つ登場する。
その4つの大学にそれぞれ活動内容が不明な謎のサークルがあるという設定。
- 京都産業大学玄武組
- 立命館大学白虎隊
- 龍谷大学フェニックス
- 京都大学青龍会
この4つの謎のサークルが、「ホルモー」という名の対戦型の競技を競い合うというのである。
そこには古くから伝わるという奇想天外な競技が存在し、簡単に言うと「オニ」が京都を駆け巡る。
あり得ねー!と思いながらも読み始めたら最後、上質な青春小説に胸熱となり、現実と物語の境目がボヤけてしまうほど熱中し、読み終えた後には放心状態となること間違いなし。
これは一言でいうと、とてもおもしろいということなんだと思う。
冷静に考えればとてもアホくさいことに真剣に取り組み、傷つき傷つけあいながらもキラキラとしている世界を描いた驚くほど鮮やかで感動の青春小説である。
「ホルモオォォォォォォォォォォォォーッッ!」
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