[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]阿部定さんの印象(坂口安吾)/阿部定事件って純愛の姿だったのかもしれないね @kun_maa

局部を切り取られると想像しただけでガクブル @kun_maa です。

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阿部定事件って知っていますか?

僕は事件の詳細は知らないくせに局部を切り取られた猟奇事件という印象が強くて、阿部定=恐い女と思っていました。

ちなみに、阿部定事件とは......

阿部定事件(あべさだじけん)は、仲居であった阿部定1936年5月18日東京市荒川区尾久待合で、性交中に愛人の男性を扼殺し、局部を切り取った事件。事件の猟奇性ゆえに、事件発覚後及び阿部定逮捕(同年5月20日)後に号外が出されるなど、当時の庶民の興味を強く惹いた事件である。 (wikipediaから引用) 

この阿部定さんに会った坂口安吾が書いたのが今回ご紹介する「阿部定さんの印象」という本。

阿部定さんは、芸者や娼婦をしながら各地を転々としていたようですが、坂口安吾の印象は次のようなものです。

阿部定さんに会った感じは、1ばん平凡な下町育ちの女といふ感じであった。(中略)すこしもスレたところがない。つまり天性、人みしりせず、気立のよい、明るい人だつたのだらうと思ふ

 

阿部定事件といえば日本の猟奇的な事件の代表のような印象ですが、坂口安吾阿部定さんには変質的なところが少しも感じられず、事件そのものも猟奇的な事件ではなく愛する男女の非常にまともな事件だという捉え方をしています。

強いて変質的な部分を挙げれば、相手の男の方にマゾヒズムの気があり性交中に首を絞めてもらうのを好んだようです。 

 

僕がお定さんに、なんべん恋をしましたか、と云つたら、たつた一度なんです、それがあの人なんです、三十二で恋なんて、をかしいかも知れないけど、でも一度も恋をしないで死ぬ人だつてタクサンゐるんでせう、と訴へるやうに僕を見た

この事件で殺してしまった男が、人生初めての恋だったというのです。

ずっと、男に騙されたり利用されたりしてきたお定さんが知った初めての恋。

好きな人に好かれる、ある意味では、そんなことはメツタにないのかもしれない。だから、お定さんがどんなに幸福で、夢中であつたか。名誉も金もいらないといふ一途な性質であつたことがうなづける

 

そして、相手の求めるままに首を絞めたら本当に死んでしまった。

本当は殺す気なんてなかったのかもしれません。

激烈な愛情の果てに、死んでしまった男の局部を切り取って胸に抱いて出て行った。

それは決して変質的な気持ちでも何でもなくて、やったことは奇妙でもずっと一緒にいたかったんじゃないのかなと、もうどうしようもないんだけどそれくらいしか愛情表現の仕方がなかったんじゃないかなと、なぜかお定さんの気持ちが少しわかったような気がしました。

 

この事件が、大きく取り上げられた社会的な背景として、当時の暗い世相が反映されていると安吾は言います。

軍部が戦争熱を駆り立てる時代。

2.26事件が起きたのも阿部定事件と同じ年のことです。社会全体が重苦しい空気に包まれていた時代です。

まつたく当時は、お定さんの事件でもなければやりきれないやうな、圧しつぶされたファッショ入門時代であつた。お定さんも亦、ファッショ時代のおかげで反動的に煽情的に騒ぎ立てられすぎたギセイ者であつたかもしれない

 

ある意味、暗い時代の憂さ晴らしのスケープゴートとして騒ぎ立てられ、いいように扱われてしまったかわいそうな事件だったのかもしれません。

 

愛し合う男女のことなんて当人同士しかわからないことだし、2人だけの特別な世界に入り込むなんてことは往々にしてあります。あなたにも覚えがあるでしょ?

本気で人を好きになった、そしてその相手からも本気で愛された。

たまたま相手の男に変な性癖があったせいで結果はこんな事件として歴史に残るほど大事になってしまったけど、本当はそこまでひとりの男を愛したお定さんに同情すべきなのかもしれません。

安吾は、最後にこう結んでいます。

お定さんの場合は、更により深くより悲しく、いたましい純情一途な悲恋であり、やがてそのほのぼのとしたあたたかさは人々の救ひとなつて永遠の語り草となるであらう。恋する人々に幸あれ

 

お定さんが言うように、一度も本当の恋を知らずに死んでいく人だってきっといます。

そこまで人を好きになれたお定さんがうらやましくも感じました。

燃えるような恋をしましたか?してますか?

身を焦がすような恋はいつでもしていたいけど、それでもあそこを切られるのはやっぱりイヤだな。それって覚悟が足りないんだよって思いながら筆を置きます。

筆で書いているわけじゃないけどさ。そんなことは知っているよね。

 

そしてなぜか阿部定さんのことを思うとこの曲が頭に流れるんだ。 

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阿部定さんの印象
 
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