長い間一瞬も外すことなく左手の薬指にはめ続けた指輪を外した。
喧嘩をしても、もうフラれたお終いだーと叫んでも、決してこれだけは外さなかった。
あの頃より太った気がしていたけれど、指に引っかかることこともなくあまりにも簡単にスルリと抜けて拍子抜けするくらい。
指輪を外したからといって、こんがらがって落ち込んだ気持ちがすっきりと晴れることなんてなかった。
相変わらず鬱々とした情けない気分で指輪を見つめる。
これじゃ何のために外したのかわからない。
それでも、少しだけ心が自由になれた気がした。いや、なろうとしたのかな。
自ら望んで自分の気持ちを縛り付けていた薬指の指輪。
この指輪と過ごした日々は、悲しいことばかりだったわけではなく、むしろとても幸せなことの方が多かった気がするけど、そんな自分の記憶も今は信じられない。
指輪を外して1日目は、身体の軸がバランスを崩したみたいに、左側だけがやけに軽く感じた。
左手の親指で何度も薬指の根元を触ってしまい、もうそこには何もないことに気づく。
どうせすぐに慣れるさってつぶやいてみた。
指輪をしなくなって数日が経っても、そこに指輪がないという違和感が消えない。
左手だけがやけに軽くなってしまったまま治らない。
何もない薬指を毎日何度も見つめている。
何度も何度も、親指がそこに何もないことを確かめている。
失くしたのは指輪の重みだけじゃなかったんだってこと、わざと考えないように蓋をしていたことが不意に心の中に溢れ出して止まらなくなる。
やけに軽くなったリングの跡と欠けてしまった心が虚しい。
今執着している場所から心は自由になれるのだろうか。そして何よりも僕は本当に自由になりたいのだろうか。
こんなに虚ろな気持ちじゃ寒くてとてもやりきれない。
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