[ま]映画「チェンジング・レーン」の巻 @kun_maa
渦中にいるとき人の視野は狭まり思考は偏向し善悪の基準もわからなくなってしまう。
それは仕事であれ恋愛であれ、熱中すればするほど嵌りこんで周囲が見えなくなっていく状況の中で往々にして引き起こされるものだ。
そんな状況でひとつのミスが致命傷になり悔やんでも悔やみきれない失敗をやらかすのもありがちな話。
渦中になければ、いつもの自分ならば、そんなミスを起こさなかったはずなのにと悔やんでみても覆水盆に返らずだ。
あのときあんなことを言わなければ...
あんな態度で接しなければ...
あちらではなくこちらを選択していれば...
僕だってそんな後悔をいくつも抱えて生きている。
そこで映画「チェンジング・レーン」。
ベン・アフレックとサミュエル・L・ジャクソンのダブルキャストってだけでもう既になにか癖の強い作品に違いないという予感しかしない。
これは渋滞するハイウェイでの車の接触事故から始まる長い特別な一日の物語だ。
車線変更の際の接触事故というほんの些細な出来事をきっかけにして2人の男の運命が狂いだす。
あのとき普通に対処していれば、お互い慌ただしくもレールを外れることのない一日で終わったはずなのに。
それは実に簡単なことだったのにも拘わらず渦中にいると…というやつだ。
魔がさすというのはきっとこういうことを指すのだろう。
劇中でもベン・アフレック演じる弁護士のギャビンは何度もこの接触事故の対応を思い返して後悔している。
それでも狂いだした歯車は止まらない。
偶然やボタンの掛け違いやほんの少しの悪意もあって相手への憎悪をお互いに募らせてエスカレートしていく報復のサスペンス。
ドキドキとして夢中で見入ってしまった。
まさに憎しみは憎しみを生むのだ。
とても対照的な2人の登場人物だが、それぞれの人物描写が丁寧に行われているので自分の立場によってどちらにも感情移入しやすい。
悪党の白人と善人の黒人というややステレオタイプな描き方をしている部分は少し鼻につくけど勧善懲悪ではないところに好感が持てる。
そして報復劇の果てに多くのものを失いボロボロに傷ついた2人。
歯車が狂いだした運命の先に現れた真実や漸く気がついた自分の本当の気持ちに素直になって自分自身の選択として運命を切り開くことができるのか。
それとも見て見ぬふりをして運命の扉にふたをして諦めてしまうのか。
僕はこの映画の終わり方がとても好きだ。