[ま]青春を山に賭けて的な夏のなにか @kun_maa
高校の3年間僕は山岳部に属して山登りばかりしていた。
もともとその高校に入学しようと思ったのも山岳部があったからなのでそりゃもう今のインドアな僕からは想像できないくらい一生懸命やっていたんだ。
そんな前振りをしておいてこれから書くのは実際の山登りの話ではないのだけれど。
僕たちの高校では毎年9月に文化祭があり山岳部は山道具や山の写真などを飾るというとても地味な展示で参加していたのだけど、それに飽き足らない僕らはほぼ部活内の実権を掌握した高2の夏に映画を撮影して文化祭で公開しようと一致団結して企画を押し通した。
映画を撮影するといっても誰も詳しい者はいなかったので勢いだけでやり抜いたって感じだった。
幸いなことにフィルムで撮影するのではなく当時一世を風靡していた SONY のβマックス形式のビデオカメラを使うことができたので全員素人でもなんとかなるもんだなって思ったものだ。
シナリオも撮影も出演者も全部自分たち。
内容は山岳部らしく山登りと友情を軸にした青春ものだ←単純か
当時の山登りなんて全くメジャーではなくて人気のない地味で目立たない日陰者のような存在だったからさ。
こんなに素晴らしいこれが俺たちの青春だってのをアッピールしたかったわけ。
いやあ青臭かったな。
僕らの高校は男子校だったのだけど青春ものに女の子がいない男一色ってのもおかしいだろってことで近所の女子高から出演してくれる女子も手配した。
女子と一緒に映画の制作とかそりゃもうみんなウキウキな夏休みである。
その撮影の前に男だらけの1週間臭い汚い辛いの3拍子揃った夏山合宿があったので尚更ウキウキだったてのもある←青春を山に賭けてないじゃないか
主に夏休みの後半を使っておもしろおかしく撮影は進んだ。
編集作業は雰囲気を出すためにわざわざ泊まり込みでやったりして楽しかったな。
今と違ってインターネットも存在しなかったのでネット配信なんて想像もつかなかった。
本当に文化祭で発表するためだけのビデオ映画。
著作権なんて考え方も田舎育ちの意識低い高校生にあるはずもなくみんなで好きな歌をカセットテープ(!)で持ち寄って勝手にBGMに使ってた。
文化祭での評判は残念ながらそれほどでもなかったのだけど僕たちにはすごく達成感を残した出来事だったんだ。
いわゆる自己満足ってやつさ。
だから翌年の高3の夏休みにもみんな予備校の夏期講習をサボったりしてまた違う作品を撮影したんだ。
ああいうみんなで何かを作り上げる作業みたいのはほんとクセになるよね。
おまけに女子もいたしさ。
2本目の作品も懲りずに山に賭ける青春的な青臭い作品だったけど。
ギラギラとした夏の太陽に照りつけられて国道沿いで排ガスを浴びながらバスを待っていたらあの夏のことを不意に思い出したものだから。
ああそういえばあの映画どうしたっけなって。
高校を卒業して大学を経て社会人になってからもこの頃の山岳部の仲間とは年に1回くらい集まって飲んでいたんだけど。
高校卒業して何年目!とか区切りがよかった時の記念で今は亡きβマックス規格のマスターテープからDVDに焼き付けて配ったことがあってね。
あのDVDはどこにいったかな。
探し出して久しぶりにあの映画の二本立てを観たくなった。
ところで僕はその作品に登場するのかって?
身長が一番高くて落ち着いていた僕は二作品とも山岳部顧問の教員役だった。
高校生の僕が演ずる先生役はなかなかハマり役だったなって自負しているのだけど作品中で女子との絡みがゼロだったのが今でも残念で仕方ないんだ。