[ま]映画「ヒメアノ〜ル」で森田剛の狂気に震えろ/予告編程度のネタバレ @kun_maa
気になっていながら劇場公開中に観に行くことができなかった「ヒメアノ〜ル」をようやく観ることができた。
評判どおりのすごい映画だった。
観終わって3日間経った今でも作品のシーンがいくつも脳裏に浮かんで胃のあたりが重たくなる。森田剛の声が耳元で聞こえるような気がする...
軽い気持ちで観ると間違いなくトラウマとなる想像以上に衝撃的な作品だ。
ちなみに「ヒメアノール」とは体長10cmほどのヒメトカゲのこと。猛禽類のエサともなる小型の爬虫類であることから強者のエサとなる弱者を意味しているのだそうだ。なぜこのタイトルなのか、そして弱者とは...それは観ればわかるはずだ。
前半の濱田岳とムロツヨシの秀逸な演技が光るダメダメな二人のほのぼのシーンや佐津川愛美が絡むラブコメ部分はとても楽しい。
こいつらどーしようもねぇなあなんてポップコーン片手にニヤニヤしながら観ていられる。余裕だ。
それが不気味な空気をまとってくるのは意外なところで挿入されるタイトルから。
このタイトルと出演者名の入り方がスタイリッシュで不気味カッコいいんだけどそれはまた別の話。え?ここでタイトルが入るの?って不思議な気がしたのだがそれが合図のように映画の空気が変わっていく。
それまで無邪気に笑えたようなシーンでさえも背後に不吉な予感が覆いかぶさってしまい素直に笑えなくなる。
後半でも濱田岳とムロツヨシがいい味を出しているのは変わらないのだが、それすら凌駕して観ている者を不安な気持ちで埋め尽くしてしまう森田剛の無機質で虚無的な狂気。残酷で吐き気をもよおすような暴力的なシーンの連続の中で見せる森田の飄々として心の欠片も感じさせない表情と口調とその目に宿る静かすぎる狂気。
いくらすごい映画だって評判でも、所詮ジャニーズでしょって舐めててゴメンなさいってマジで思った。
ありふれた日常生活と隣り合わせに存在し、次第に日常に侵食してくる希望の欠片も感じさせない絶対的な悪意の世界。
凶行に及ぶ森田剛の姿を見るたびにブルーハーツの「トレイン トレイン」のあるフレーズが何度も頭の中で再生された。
森田剛の演じるむき出しの狂気に震えたというと表現が陳腐すぎるだろうか。悲惨な過去とその過去を叩き潰したはずなのに幻影に囚われ続けて永遠に止まってしまった幸せな記憶に凄惨なバイオレンスが重なる。
登場人物の演技にもストーリー展開にもすっかりやられた。あまりにも無防備に油断していた。心の奥の大事なものを無理やりこじ開けられてその一部をえぐり取られたような不快感と恐怖心に僕自身が囚われてしまったようだ。
そのせいで今でもフラッシュバックのように映画のシーンが突然頭に浮かぶのだろう。
ラストシーンはとても切なくて涙がじわっと浮かんだにもかかわらず、観終わった後の救いようのない絶望感に打ちひしがれた。心を揺さぶられる映画というのはこういう作品を指すのかもしれない。いや、心を潰されるというべきか。
最初にも書いたけど、僕は未だにこの作品の呪縛から逃れられずにいる。今これを書きながら様々な思いが頭の中を駆け巡り、胃がずしりと重たくなり、沈みがちな気持ちがさらに落ち込んでしまった。
自分がこんな感じなので、決してすべての人におすすめできる映画ではないと思うが、観る人の心に刺さるすごい作品であることは間違いない。
このブログを気に入っていただけたら、ちょくちょくのぞきに来ていただけるとうれしいです。そして、とっても励みになります。
RSS登録していただける方はこちらのボタンをご利用ください。