[ま]グーグル ネット覇者の真実/Googleとはなにかを知るために最適な一冊 @kun_maa
本書はグーグル社内での自由な取材を初めて許されたジャーナリスト、スティーブン・レヴィによる数多くのインタビューに基づいて書かれた、生のグーグルを知ることができる貴重な本である。
このノンフィクション作品は、グーグルの若き創業者であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが、人々の想像を超えた理想である「世界中の情報をアクセス可能にして世界をよりよいものに変える」を実現していく物語であり、その過程で生じたさまざまな社会との軋轢や解決のための努力と工夫を内部の視点から描き出すことに成功している。
グーグルというある意味で秘密主義の会社がこれまでどのように考え、どのような技術革新を実現し、世界にどれほどの衝撃を与えてきたのかを知るには最適な作品だと言えるだろう。
会社の経歴など普通なら退屈になりそうなものだが、グーグルという秘密と刺激に満ちた会社を絶妙な筆力で書き綴っている本書は、相当な分量にもかかわらず、最後までその魅力に捉えられて飽きることがない。
すでによく知られているページランクやアンドロイド、YouTubeやアナリティクス、検索連動広告であるアドワーズなどの誕生や発展の経緯などが明かされていくのを目にするのはとても興味深く刺激的だ。
また、随所で取り上げられる創業者のペイジとブリンの人物像についても、非常に興味深い。2人が偶然幼少期に受けていた「モンテッソーリ教育」という言葉は初めて知ったが、内容を知るにつれ、いつまでも遊び心を忘れないグーグルという会社の基礎がわかったような気がした。
本書で取り上げているのは、グーグルの成功の歴史だけではない。
グーグルがSNSの部門で出遅れ、Facebookの後塵を拝しながら失敗し続ける様子。
Gメールやブックサーチの展開で先鋭的なエンジニアや創業者たちの感覚と世間の感覚の違いから大きな批判を浴びることとなる顛末。
「ネット覇者」として君臨することになったがために、ネット広告に関する反トラスト法の適用をめぐる司法当局との軋轢。
会社としての理想と中国政府との確執。その「戦い」と失敗。
これらの失敗の歴史にも多くのページを割いている。
これらの内容からも、グーグルがなにを大切にし、どんな考え方を基にして行動しているのかをうかがい知ることができる貴重な資料である。
そして、「邪悪になるな」を掲げるグーグルが従来の一般的な企業活動や慣習を良しとせず、独自の方針にしたがってさまざまな事業展開や企業活動を行ってきたことを評価するとともに、その活動が一部変化してきていることも著者は指摘している。
それをもってしても著者自身は、グーグルは「邪悪になったわけではない」としているが、本書に書かれていることを客観的に見た場合、これについては意見が分かれるところではないかと感じた。
また、グーグルについて多くの人が不信感をもっていることとして、さまざまな個人情報を一企業がネットから収集し、独占して保有していることがよく挙げられるが、この点に対する危惧についても著者は触れている。
そしてあるグーグル幹部の言葉として次のように紹介している。
「私だって心底怖くなることがある」と。
たしかにグーグルはさまざまな問題を抱えているのかもしれない。
なんといっても「ネット覇者」だ。
その基盤は現在も揺らぐことがないし、邪悪になろうとすればいくらでもなれる要素は備えている。
本書の終わり近くで、著者は次のようにグーグルのことを表現している。
「結局のところグーグルは、成功へのいちばんの近道は世間一般の常識では不可能とされていることを実現してしまうことだという前提で創立された会社なのだ」
個人的にはこれからもグーグルにはずっとこのような会社でいてほしいと願っている。
そして、もっとワクワクする世界を体験させてほしい。
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