[ま]生きるってどういうことなのかな/サンカーラ この世の断片をたぐり寄せて @kun_maa
3.11をきっかけとして、著者自身が自分の内面に目を向けていく過程で書かれた本書。
身内の死や原発、水俣病、戦争、アルコール依存症だった父や引きこもりの末に餓死した兄と過去の自分自身の想いなどによる著者の混乱や困惑が直に読む者に伝わってくる。
著者を通してたぐり寄せられた「この世の断片」とも言えるさまざまなエピソードが、読み手の心を揺さぶっていく。
何事にも正直な気持ちでぶつかっていく著者の姿勢に感動するとともに、その真摯な態度に痛々しさを禁じ得ない。
普段、自分には関係ないと思っているさまざまなこと、見ないように誤摩化していることの本質を著者の言葉が引きずり出して、白日のもとにさらけ出してくれる。
それは痛みであり、苦しみであり、情けなくもあり、決して楽しいものではない。
しかも言葉として紡ぎ出した途端に、それは空虚なものと化してしまう。
命とはなにか、生きるとはどういうことか、人生とはなにかということをいやが上にも考えさせられる本である。
自分はなにがしたいのか、自分は誰なのか、自分はどう生きたいのか・・・
本のなかに、イタリアで行われたシンポジウムの場で、著者がこれからの日本について質問されたときのスピーチが載っている。
今、あらためてその部分だけを読んでみるとなんてことはないスピーチに思える。
でも、作品を通して読んでいたとき、そのスピーチは僕の心に突き刺さり、思わず涙が出てしまった。
それが、なぜそんなに突き刺さったのか、今は思い出せない。
それがたぶん言葉の持つ力であり、その力は気まぐれで、受け手の気持ちや文脈によって心動かされたり、陳腐なものになったりする。
どうやら僕も著者の等身大の混乱と困惑の中に囚われてしまったようだ。
すべてのことをありのままに受け止めて、傷つき、混乱しながらそれでも生きていく。
生きるってどういうことなのかな。
その答えは、見えそうで見えない。
その答えは、自分の人生の中にしかないのだということはわかっているんだけど。
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