逃げる逃げる 僕は逃げて飛びつづける ー 山田かまち
本書は家入氏の少年時代からペパボを立ち上げてGMOと資本提携するまでの半生を描いた自伝的作品だ。
お金はないけど幸せな少年時代、つまらないことでいじめに遭いひきこもりとなった中学生時代、高校中退、絵画との出会い、就職と出社拒否、新聞配達員の生活、両親の離婚、挫折と様々な出会い、そして起業。
飾らない言葉で、素直な気持ちが表現されていて、とても好感がもてる。
彼がどんなに失敗しても、情けなくてもそれでもやっていけたのは、家族の存在と愛情があったからなんだろうと感じた。
恐らく貧乏だったけど幸せな少年時代がなければ、どれだけ迷惑をかけても見守ってくれている両親の存在がなければ、彼はここまでやってこれなかったんじゃないかと思う。
彼の活躍のベースともなるパソコンとの出会いだって、父親がなけなしのお金をはたいて買ってくれた中古のデスクトップパソコンがきっかけだ。
絵画に目覚めた彼に油絵の具などの絵画の道具を買ってきてくれたのも父親だ。
苦しい家計状況の中でも学校にも行かず、働きもしない息子を責めることもせず、ひたすら温かく見守る両親。
そして、逃げて逃げて自分の人生と真剣に向き合おうとしなかった彼が変わったのも、奥さんと子どもという新しい家族のためだ。
お金なんて、ないならないで幸せになれると、多くの人が言う。
確かに、それはそうだと、僕も思う。幼い頃に過ごしたボロ屋のカビ臭い匂いや、月に一度、楽しみにしていた外食の味は、大人になった今でも、決して忘れることのできない大切な思い出で、お金がなくたって、あの頃の僕は、確かに最高に幸せだったからだ。
・・・だけどもし、そんな僕の家に、もう少しだけ、お金があったら。
父さんと母さんが離婚して以来、僕はどうしてもそのことを考えずにはいられなかった。
(中略)
僕に奥さんができて、子供が生まれる、新しい家族ができる。そう考えたとき、お金なんてなくたって何とかなる、そんなふうには、どうしても言い切れなかった。
(P.190〜191)
そこからの彼の頑張りには目を見張るものがある。
そして、ダメなときも、素晴らしいときも、家入一真という人を支えてきたのは、家族なんだなあと思う。
本書は、ひきこもりの青年が社長になったという成功譚として見ることもできるだろう。
でも、僕は単なる成功譚ではなく、家族の物語だと思う。
彼が成功したのは、もちろん彼の努力や人との出会いが重要で、運だって味方したかもしれない。でも、家族という存在なしには語れない物語だと思うのだ。
その上で、彼が最後に語る言葉は素晴らしい。
どんな道にも必ず行き止まりはある。自分が、道の行き止まりに立っていることに気づかずに、前に進めないともがき続けるくらいなら、来た道をちょっとだけ戻って、やり直してみればいい。身動きが取れないことに絶望的になって、自ら命を絶ってしまうくらいなら、誰も追ってこないところまで、全力で逃げればいい。
世の中は広い。地球は、途方もなく大きい。どんな人にだって、どこかにきっと、何も恐れることなく、ハッピーに暮らせる場所があるはずだ。前に進まなくたって、逃げたって、生きてさえいれば、きっといつか、そんな場所にたどり着く。逃げることは、決して悪いことじゃない。(P.286)
家族の大切さと、生きる勇気をくれる一冊である。
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