[ま]ゾンビ襲来(ダニエルドレズナー ほか)/ゾンビ発生を国際政治学でまじめに論じた一冊 @kun_maa
僕はゾンビ大好きです。ゾンビ映画の感想はもうひとつのブログに書いているのでこちらにはないんですけどね。
ゾンビは最近はそうでもないけどちょっと前まではポピュラー・カルチャーの中では昇り調子のジャンルでした。
ゾンビ映画の封切り数は新世紀の幕開けとともに急増し、統計によればすべてのゾンビ映画のうちその3分の1以上が過去10年の間に封切られているそうです。
またゾンビへの関心の高さは映画だけに限られたことではなく、バイオハザードシリーズなどのゲームやウォーキングデッドなどのドラマなど多くのジャンルで取り上げられ伝統的なホラーの世界では最もポピュラーな存在と言っても過言ではありません。
ゾンビへの人々の関心は常に社会的な不安や社会問題と結びついてきたといいます。
ジョージ・A・ロメロのゾンビ三部作は、それぞれベトナム反戦運動とカウンターカルチャーの挫折、極端な消費社会、レーガン政権下で深刻化した社会的矛盾を表現していることは有名です。
また、アメリカにおける9.11テロや炭疽菌攻撃がバイオセキュリティを含め、ゾンビに対する関心を換気していると言う評論家も存在するそうです。
アメリカにおいては、主要大学や警察当局がゾンビ・アウトブレイクを想定した緊急事態対応の「模擬」計画を策定しており、ハイチでは実際には使われていないもののひとびとのゾンビ化を予防するための法律が存在し、哲学などの人文諸科学や自然科学の分野ではゾンビ問題について様々な研究が行われているそうです。
しかもなんとそうした研究者の集まりでもある「ゾンビ研究学会」なるものまで存在しているというのだから驚きです。
そのようなゾンビ問題をめぐる状況の中、社会科学はこの問題をまじめに考えてきてはいなかったというのが本書が書かれるきっかけともなっています。
本書の趣旨を簡単にいうと、ゾンビが現実に出現したら既存の国際政治学の理論がどう対応するのかをものすごく真面目に検討している本です。
本書で検討されている国際政治学の各理論はリアリズム、リベラリズム、ネオコン、コンストラクティヴィズムと多岐にわたります。
ゾンビのアウトブレイク、そして奴らの襲来という状況を前提とした内容なのですがゾンビの部分を現実の国際政治の諸問題に置き換えても十分通じるものです。
果たして実際にゾンビが出現したら映画やドラマの世界のように人類はみじめに滅亡するしかないのか。
ゾンビに有効な対策とそれらを実行することの国内外の軋轢やパワーゲームはどう進行していくのか。
映画やドラマで描かれるミクロの視点から離れて国内政治、国際政治、国家間の力関係や国益をめぐる国家戦略などの視点からゾンビ問題はどのような方向へ進んでいくことが想定されるのか。
本書を手にとって想定されうる現実の課題を確認してみてください。
ゾンビ好きには必携の書であり国際政治学の入門書としてもオススメのおもしろい本です。
- 作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2012/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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