[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]映画「凶悪」/実際の事件を基にした人間の心の闇を思い知らされる作品 @kun_maa

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本作品のモデルとなった事件は死刑囚がまだ明るみに出ていない余罪、3件の殺人を雑誌記者に告白したことがきっかけとなった「上申書殺人事件」である。その顛末を綴ったのが「新潮45」編集部の「凶悪ーある死刑囚の告発」だ。

映画の中では「新潮45」が「明潮24」という設定になっていてあくまでもフィクションとして制作されてはいるのだが、まさに「凶悪」としか言いようのない事件を基にしていることがこの作品に凄みを与えているのは確かだ。

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

 

それに加えてキャスティングが素晴らしい。

事件を追う雑誌記者に山田孝之、元暴力団幹部で死刑囚の須藤にピエール瀧、そして「先生」と呼ばれる悪徳不動産ブローカーを演じているのがリリー・フランキーである。この面子が揃っていて面白くないわけがない。

凶悪

物語はいきなり壮絶な暴力シーンから始まる。ピエール瀧の演技がキレキレで100%極道。あの巨体と笑わない目で「てめー、今からぶっこんで(ぶっ殺して)やるからよ」って呟かれたら誰でもビビる。

最初からそんなふうにガツンとかまされて、わけもわからないまま「凶悪」な暴力の中に放り込まれることで戸惑う観客をまるでおもしろがるように、残酷な描写の断片が冒頭で展開される。須藤が逮捕されてようやくタイトル浮かび上がってくるのだが、逮捕シーンでアップになるピエール瀧の凶悪さ爆発な表情がまさに凶悪そのものである。

 

冒頭にはいきなり驚かされるが、その後のストーリーは静かに淡々と進んでいく。

明潮24」の編集部に届いた須藤という死刑囚からの手紙。それを担当させられた山田孝之演じる藤井が刑務所に面会に赴くと、須藤から「自分があれだけのことをやって死刑になるのはしょうがないが、どうしても許せない男がシャバにいる。自分のことを記事にしてそいつを追い詰めてほしい」と言われる。

その男こそが、須藤がかつて慕っていた「先生」と呼ばれる木村である。最初は須藤の記憶が曖昧で全く信用していなかった藤井だが取材を続けるうちに......

 

須藤と木村の過去と現在の藤井の取材シーンが交錯しながら同時に進んでいくのだが、この展開がまた絶妙である。

須藤と木村の凶悪さがどんどん際立っていくのと同時に、藤井は真実に辿り着くための取材に取り憑かれていく。

 

須藤の凶悪さは主にその暴力性に現れているのだが、リリー・フランキー演じる木村の凶悪さはその無邪気な表情にある。楽しそうに人を嬲り、心の痛みひとつ感じずに殺せる男が木村だ。

二人とも表現は違っても、人間の心に潜む「凶悪」さを見事にえぐり出してこれでもかと見せつけてくる。ここまで人は残酷になれるし、そんな残酷さは誰もが持っているものなんだよとあざ笑うかのように。

 

取材を重ねて変わっていく藤井の様子にも注目してほしい。

「正義」という大義名分を振りかざし事件に取り憑かれていく彼の姿。自分の置かれた現実からは目を背け、大義に根ざした拳を振り上げるかのようなその執拗な行動。

しかしそれこそがこの事件に根ざしている「凶悪」さの根につながっているものなのかもしれない。

そんなことをこの映画を観終わって感じた。

 

この作品同様に、現実の凶悪な犯罪をベースにした映画に園子温監督の「冷たい熱帯魚」がある。 

冷たい熱帯魚

冷たい熱帯魚

 

この作品もかなりエグい表現満載で好きなのだが、「冷たい熱帯魚」の殺人者が見せる知っていてあえて道徳を踏みにじる確信犯的な振る舞いに対して、純粋に無邪気な子供のように平然と人を殺していくこの作品の登場人物の方により人間の心の闇と恐怖を感じる。

暴力シーンなどを全く受け付けないという人にはその凶悪さ故におすすめできないが、ある程度の暴力的さならば大丈夫で、社会派作品が好きという人や山田孝之ピエール瀧リリー・フランキーの演技が好きな人には絶賛おすすめの作品である。 

凶悪

凶悪

 
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