[ま]人生が変わる哲学の教室/人生は変わらないかもしれないけどおもしろい試みの哲学入門書 @kun_maa
「哲学」って聞くとなんだか難しそうで、常に眉間にしわを寄せて深刻な顔つきで何か人生についてのあれやこれやをガッツリと考えなくてはいけない学問のような気がします。
そんな気楽な気持ちで飛びついたら火傷をするよ!って髭を伸ばした怖そうなおじさんに叱られる的な怖さも感じます。
でも、そんなことないんだよ。哲学ってもっと気楽に取り組んで、自分たちの悩みや問題について自分の頭で考えることが大切な楽しい学問なんだよって声をかけてくれるような本。それが本書「人生が変わる哲学の教室」です。
本書は、架空の存在である私立久我伝(くがつて)高校の教室で、深夜に14日間連続で行われる「哲学の教室」を舞台にし、歴史上の著名な哲学者が現れて授業を行うという設定になっています。
毎回決められたテーマに合った哲学者が登壇し、悩める高校生やサラリーマン、主婦など様々な背景をもった生徒たちに対して講義を行います。
その様子は簡単にいうと、表紙の帯に書かれている次のような宣伝文句そのままです。
たとえば、1時限目はハイデガーが「生きることと死ぬことについて」、2時限目はヘーゲルが「夢について」、3時限目はカントが「理性と欲望について」、4時限目はメルロ=ポンティが「悩みについて」といった感じで講義を進め、登場人物たちが様々な考えを巡らす様子が描かれています。もちろん、読者も読みながら様々なことを考えずにはいられません。
それぞれの講義は一話完結スタイルで、その章を読めば登壇した哲学者の思想の概略がわかるように工夫されているのがよくわかります。章の最後にはそれぞれの哲学者から読者に向けたメッセージも書かれています。
もちろん、みんな既に他界している哲学者たちですからこれはフィクションです。
著者も次のように書いています。
「もしカントやハイデガーが授業をしてくれたら、こんな感じなのかな」という雰囲気を気楽に楽しみつつ、人生の問題をともに考えていただければと思うのです。
そう、あくまでもフィクションであることを前提にしつつ、著名な哲学者とともに自分で考えながら読むというところにこの本の楽しさと有効性があるのです。
普段はまじめに考えることのない「人生とは?」、「愛とは?」、「家族とは?」、「幸せとは?」といったことについて、哲学者の意見と自分の考えを照らし合わせながら時には賛同し、時には疑問を投げかけながら積極的な読書を行うことで、もしかしたらタイトルのように「人生が変わる」かもしれませんし、やっぱり変わらないかもしれません。
でも、大切なことは本書をきっかけにして、自分の人生に関わる様々な問題を自分の頭で考えることにあるのです。
文体は非常に読みやすく、内容も簡略化されていてとてもわかりやすいです。
難しくて敬遠されがちな「哲学」について、斬新な手法を試みることで楽しく、そして興味を掘り起こすように書かれたとても優れた入門書だと思います。
人生に迷っている方、哲学を齧ってみたい方にとてもおすすめの一冊です。
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