[ま]ジャンゴ 繋がれざる者/痛快無比なマカロニウエスタン的タランティーノ作品 @kun_maa
クエンティン・タランティーノ監督・脚本映画「ジャンゴ 繋がれざる者」を観てきた。
メインタイトルの「DJANGO」、オープニング曲や赤字のクレジット、画面の色使い、その他にも作品中の様々な場面に、いわゆるマカロニウエスタン映画へのオマージュが満載の作品である。
それほど詳しくはない僕にもわかる部分が多かったのだから、きっと気づかなかった部分にも多数のオマージュが込められた作品なのだろう。
それにしても、痛快な作品だった。
(作品公式ホームページより)
前半は純粋に2人の賞金稼ぎとしての活躍が楽しめる。
タランティーノならではのユーモラスなシーンもあり、観ていて本当に楽しい。
なによりも、あの黒人奴隷時代のアメリカ南部で、黒人の賞金稼ぎというあり得ない設定を、こういうのも在りかと自然に思わせる演出が好きだ。
しかもジャンゴを演じるジェイミー・フォックスがスタイリッシュでカッコいいときている。
しかし、この映画の見所は後半、レオナルド・ディカプリオ演じる悪役キャンディが登場してからだ。
僕は元々ディカプリオという役者はあまり好きではなかった。
どことなく薄っぺらさを感じさせる役者だからだ。
しかしこの作品の彼は違った。こういうのをハマり役というのだろう。
もっと早くこんな悪役を演じていたらディカプリオのファンになっていたかもしれない。それくらいこの作品での、彼の眼差しや動作のひとつひとつが存在感を主張してくる。
奴隷としてキャンディのもとにいるジャンゴの妻を取り戻す為に、シュルツとジャンゴが取った作戦とそれが進行していくにつれていやが上にも高まる緊張感。
合間に繰り広げられる、見るに耐えない黒人奴隷に対する残虐シーン。
どうしても非道な黒人差別が許せず、本来の目的達成寸前でぶち切れて暴発するシュルツとその後の激しい銃撃戦。
銃撃戦の血糊の量がハンパなくて、「あー、人間てのは血の詰まった革袋なんだなあ」って不思議な気持ちにさせられた。ちょっと現実離れした感じ。
差別主義の白人連中を次々と撃ち殺していくジャンゴに爽快感を覚えるのは、その前段での黒人差別描写が強烈であればこそである。
敵に捕まり絶体絶命の主人公ジャンゴとその後の逆転劇。
ラストシーンは痛快過ぎて、ある種のカタルシスを引き起こされる。
黒人による黒人差別者を演じているサミュエル・L・ジャクソンのイヤらしいほどの憎たらしさとざまーみろ的最後も見物である。
あり得ない設定とそれを自然に調和させて違和感を感じさせない全体のストーリー展開。
しっかりと描かれている黒人差別。
痛快無比なマカロニウエスタンの形を借りつつ、タランティーノらしさも盛り込んでいる素晴らしい作品である。
165分という長さをまったく感じさせない。
第85回アカデミー賞で助演男優賞と脚本賞を受賞したのも納得である。