[ま]隠されたパーソナライゼーションに警鐘を鳴らす/閉じこもるインターネット @kun_maa
こんにちは!テレビは見ないけどインターネットは毎日使う @kun_maa です。
インターネットって、自分では捌ききれないほどの豊富な情報や選択肢を誰にでも平等に提供してくれる便利な道具で、誰でも自由に参加できる公共空間だと思っていました。
でも、本書を読んであまり暢気なことも言ってられないのねって感じです。
「閉じこもるインターネット」(イーライ・パリサー 著)
本書で取り上げているのは、インターネットにおけるパーソナライゼーションの問題です。
パーソナライゼーション自体は、突き詰めていくとあらゆる面で個人にあわせてカスタマイズされた環境が提供されることになるため、自分が好む人々、話題、物、アイデアだけに囲まれた世界が出来上がります。
それは、一見悪いことではないように感じます。だって、自分の目にしたくないモノは視界に入らないのですから、これは快適です。
でも、これがどのように構築されていくのか、利用者には知らされていません。
Googleで検索した言葉、クリックしたサイトの傾向、フェイスブックで「いいね!」をつけた記事の傾向や交流がある人々の傾向や親密さの度合い、Amazonで購入した本の傾向などなど、すべてのインターネット上の行動が知らないうちに収集されて、パーソナライゼーションに利用されています。
しかも、これらは公的機関でも何でもない私企業が、それぞれ好き勝手に行っているのですから、プライバシーもへったくれもありませんね。
本人の知らないところで、時にはそれらの情報は売買され、あなた好みの検索結果や、広告が提示されることになるのです。
利用者にはわからないパーソナライゼーションの浸透により、みんなが同じ情報に接しているつもりでいても、あなたの見ているインターネットは私が見ているインターネットと同じとは限らない状況になりつつあるのです。
検索結果から、表示される広告まであらゆる情報が我々の知らないところでカスタマイズされ、利用されています。
そのことで享受している利益がある反面、そのために支払っている個人情報という対価は大きいと思います。
ある企業は、あなたしか知らない恥ずかしい性癖や、信用に関わるような交流関係をインターネットの利用歴から把握していて、あなたが自分で築いている「あなた自身」というアイデンティティーとは違った評価をしているかもしれないのです。
そして、その評価によってパーソナライズされた世界に知らないうちに取り囲まれ、気がつかないうちに他の情報には触れることができなくなっているのかもしれません。
また、逆に意図的にパーソナライズした情報のみが提示されることにより、その人自身の興味関心や行動を変化させる危険性すら持っているのです。
それが可能であれば、当然利用して利益を上げようとする人間が出てきます。
購入履歴を参考にして客観的に選んだように見せかけて、スポンサーがお金を払ってくれる商品を推奨することだって行われないとは言い切れません。
そして最大の問題は、可能性として購買行動や世論すら動かしかねない力を持つに至ったフィルターを私企業がそれぞれ勝手に開発・運用していることにあります。
そこでは、どのような方針で、なにをどのように処理してパーソナライズしているのか、まったくわからない状態です。
自分の言動が誤解されてパーソナライズされていても、それを訂正する機会もないばかりか、実際のところどこまでパーソナライズされているのかすら、我々にはわかりません。
本書では、パーソナライゼーションに関わる様々な問題点をわかりやすく提示するとともに、この状況を解決するためのさまざまな提言も行っています。
多くの人々が現状を知り、それに対する危機感を持つことが求められています。
便利で快適な世界と引き換えに、自分たちが何を提供し、何を失っている可能性があるのかを気づくところから始めなければならないと思いました。
インターネットに詳しいわけではない自分にとっては、ある意味衝撃的な一冊でした。