こんにちは!苦痛な読書は大嫌い、楽しい読書しかしたくない!@kun_maa です。
僕はうつになる前は、読書と言えば小説オンリー、自己啓発とか仕事術なんて全く興味がありませんでした。
病気になって、回復してきて初めて自分のこれまでの仕事のやり方に疑問と限界を感じて、いわゆるビジネス書と呼ばれる類いのものに手を出し始めました。
たいした数は読んでいませんが、確かにその手の本を読むと漠然とした不安が治まり、自分もできる人間になったような気がしてきます。
不思議ですね。
でも、その一方で本屋に数多く並ぶビジネス書の似通ったタイトルや内容に違和感というか、あえて言えば多少の気持ち悪さを感じていたのも事実です。
「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」
実に刺激的なタイトルですね。
タイトルだけ見ると、ビジネス書の流行に一枚噛ませて適当な批判で売ってやろうというダメ本にも見えてしまいます。
でも、この本はそんな薄っぺらな本ではありません。
本書で語られているのは、いわゆるゼロ年代ビジネス書の総括から、薄利多売の出版業界の裏側、そんな出版業界のシステムと不安に振り回される読者の実態、自己啓発・成功哲学本における定番ストーリーの解説や、古典的ビジネス書のエッセンス、ビジネス書との望ましい付き合い方までとても充実した内容がわかりやすくまとめられています。
著者は、そのようないわゆるビジネス書を読まずにいられない人びとに対して「年収は上がりましたか?」「独立起業できましたか?」「夢が具現化しましたか?」と問いかけます。
そして、一部の定番タイトルや古典的ビジネス書を除いて、自己啓発や成功法則に関するビジネス書は、しょせんは過剰なカフェインや糖分で一時的にテンションを上げる「栄養ドリンクのようなもの」であり、中毒症状に陥っている人は痛々しいと注意を喚起していきます。
だからといって、著者は全てのビジネス書をそのようなダメ本だと切り捨てている訳ではありません。
いいものはいいと認めているし、読書の大切さについても説いています。
著者が危惧を抱いているのは、「ビジネス書」に危機感を煽られ、依存し、できる人間になった気になって、いま目の前にある仕事、自分に任された仕事、それを粛々と実行していくことを忘れてしまうことです。
多くのものごとを犠牲にして「ビジネス書」を読みふけり、「ビジネス書」に踊らされてその内容を猿真似し、「成功」への道を進んでいると勘違いしている人びとに対して、ちょっと待ってよ、本当にそれでいいの?という問いかけなのです。
そもそも自己啓発書とは、畑にまく肥料のような本だと捉えています。読んだからといって、すぐに生活が豊かになるわけでも、業務スピードがアップして営業トークがうまくなるわけでも、職場の人間関係が劇的に改善されるわけでもありません。そうした短期的に結果が出るような効能ではなく、ジワジワと時間をかけながら、自分の思考の土台を柔軟にしたり、奥深くしたりするのを助けてくれる本だと思うのです。(P.224)
ビジネス書が「アナタも成功者になれる」と無責任に煽ることで形成される、高めに見積もられた自己評価。その瞬間は、ちょっと気持ちがいいのです。自分がデキる人になったような気分になります。でも、ほどなくすると”自分の目の前にある現実”に気づき、余計に不安が募るのです。夢や願望と、実際のビジネス環境や日々の暮らしとの齟齬ーそこでたまっていく違和感や不安感を手っ取り早く解消してくれるのが、新たなビジネス書です。ビジネス書を読んだことで生じる不安感を取り除く、ガス抜きアイテムとしてのビジネス書、という具合。このマッチポンプ感、滑稽ですらあります。 (P.240)
そろそろ「効率」とか「成功法則」とか「10倍アップ」といった、ビジネス書的世界感にまみれたキーワードに縛られるのはやめてみませんか。どうせ読むなら、いろいろなジャンルの本を手に取り、多様な叡智や言説に触れてみることをオススメしたいのです。重層的な知識や思考が身につくことで、これまでの義務感や危機感だけで読んでいたビジネス書の新たな一面が読み取れるようになるかもしれません。(P.251)
著者は、余計なことを考えずに最適解にたどり着くこと、効率化を最大化することがライフハックの神髄といわれればそうなのかもしれないけれど、自分で仕事をしながらあれこれ悩んだり、遠回りしたり、失敗や試行錯誤を通して、しっかりと自分の足もとを確認しながら自分なりの経験則を積み上げていくことでしか仕事術なんて身に付かないのではないか、と問いかけます。
そのうえで、自己啓発書を読むのであれば、流行の「劣化再生版自己啓発書」ではなく、ナポレオン・ヒルやデール・カーネギーの著作やスマイルズの「自助論」、「7つの習慣」などの定番中の定番をじっくりと丁寧に読むことを勧めています。
また、多くのジャンルの本を読んでみること、同じ職場にいるデキる社員の仕事ぶりをよく観察して、真似てみることなどの方が、「ビジネス書」に踊らされているよりよほど現実的な効果を発揮することが少なくないことなどの例も挙げ、無闇にビジネス書に踊らされるのはもう止めませんか?という提案をしているのです。
最後に著者は言います。
ビジネス書に中途半端に感化される前に、会社や取引先など自分の身近で関わる人たちから学べることがたくさんあるはず。また、何気ない日常生活のなかにも、人として気を配らなければ行けない要点に気づかされる機会は数多く存在しています。
ビジネス書を使いこなすのではなく、ビジネス書に使われるような読み方から、そろそろ卒業しましょう。ビジネス書に無闇に踊らされるのは、もうたくさんです。
ビジネス書ばかり読んでいても、デキる人には絶対になれません。(P.254)
全くそのとおりだと思います。
デキる人になりたい人もそうでない人も、「ビジネス書」に頼る前に一読することをお勧めする良本です。
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