[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]社会はなぜ左と右に分かれるのか/仲良くやっていくのはなぜ困難なのかを考える本 @kun_maa

本音をいえば、僕は左だの右だのというラベル貼りや論争とは距離を置いて平穏に暮らしたい。

だからといって、人間が敵対するグループに分かれ、各々が自分たちの正義を盲目的に信じ込んでしまうという現象を理解しようとしなくてもよいかといえば決してそんなことはない。

それらの仕組みをある程度知って眺めるのと、全く知らずに怯えるのとでは大違いだ。 

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
 

本書の著者ジョナサン・ハイトは、ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授を務める道徳心理学者であり、研究分野は道徳の情動的、直観的な基盤、リベラルと保守主義の間に見られるような党派間や文化間での道徳のとらえ方の違いの分析である。

まさに本書のテーマにぴったり。

 

本書は、索引を含めて600ページを超える大作となっているが、大きく三部構成をとっている。その各部のなかで著者の提起する道徳基盤理論を説き、その上で保守、リベラル、リバタリアンの違いや、そのような集団の成立、発達過程に踏み込んでいく。

専門的な用語が出てきたり、直観的にわかりにくい部分もあるが、その解説はできるだけ実験や事例を多く取り上げながらわかりやすく説明しようという意欲を感じる。

 

第1部では、第一原理「まず直観、それから戦略的な思考」を提起し、道徳的な判断における直観や情動の重要性を強調し、理性偏重主義を批判している。

これまでの理論をわかりやすく比較対比した上で、著者自身や他の研究者の成果も踏まえ「理性は情熱の奴隷であり、それ以外であるべきではない」とするD.ヒュームの主張を正しいと結論付け、「道徳的な思考は、多くの場合情動の召使いと化している」という主張を展開して「情動」の重要性を示し、合理主義を退けている。

道徳の源泉は生得的な性質と社会的な学習の複合にあるのだ。

 

第2部で提起される第二原理「道徳は危害と公正だけではない」においては、第1部での主張を踏まえて自身の「道徳基盤理論」を詳細に解説している。

ざっくりといえば、この理論は人間の道徳基盤は善悪といった単純な二元論ではなく、「ケア/危害」「公正/欺瞞」「忠誠/背信」「権威/転覆」「神聖/堕落」「自由/抑圧」という人の心に訴えかける基本要素から構成されるのだと主張。

そしてこれらの組み合わせによる「6次元の道徳マトリックス」の存在を膨大な実験や研究成果から導き出している。

事例として興味深かったのは、この道徳基盤理論を使って、アメリカの共和党が民主党よりも上手く有権者を引きつけてきた理由を分析しているところだ。

リベラルは保守主義と比べてこの道徳マトリックスにより人々に訴えかける項目が少ない。著者の分析によれば、リベラルは「ケア/危害」「自由/抑圧」「公正/欺瞞」の3項目だけで、保守は6項目すべてに依存している。

道徳心理学は、1980年以来、民主党有権者にうまく訴えられなかった理由を教えてくれる。共和党は、民主党より社会的直観モデルをよく理解している。つまり、直接<象>に訴える術を心得ている。加えて、道徳基盤理論をよく理解しており、すべての道徳の受容器に刺激を与えようとする。

 

そして、第3部では第三原理「道徳は人々を結びつけると同時に盲目にする」を提起している。

ここでは道徳の進化過程について進化生物学や進化心理学の知見を活用しながら論を進め、道徳の持つ長所(人々を結びつける)と短所(盲目にする)を明確にしていく。

著者は次のように述べた後で、この考え方だけでは不十分であることを指摘し、集団選択を含むマルチレベル選択の考え方を論んじていく。

遺伝子は利己的であり、利己的な遺伝子は多様な心のモジュールを備えた人間を生む。そしてこれらのモジュールのいくつかは、普遍的で誠実な利他主義ではなく、戦略的な利他主義へと私たちを導く。こうして私たちの<正義心>は、血縁選択に加え、ゴシップと評判の操作を含めた互恵的利他主義によって形作られる。これは、道徳の進化的な起源を解説するほぼすべての書物が指摘するところでもあり、ここまで私が述べてきたことは、それとまったく矛盾しない。

そこでは、個体間ではなく集団間の争いを通じて、集団内での協力関係を可能にする道徳が人々に適応的な優位性を与えるようになったのだと指摘し、それは必然的に自集団内の郷党的なものにならざるを得ないとする。

だから「道徳は人々を結びつけると同時に盲目にする」のである。

 

本書では上記のような道徳基盤理論をもとに、なぜ人々は政治や宗教をめぐって対立するのか(本書のタイトルも「なぜ左と右に分かれるのか」だし)を考察している。

そこで描かれているのは善悪の二元論ではない。

その答えは、

「私たちの心は、自集団に資する正義を志向するよう設計されているから」である。直観が戦略的な思考を衝き動かす。これが人間の本性だ。この事実は、自分たちとは異なる道徳マトリックスのもとで生きている人々と理解し合うことを、不可能とは言わずとも恐ろしく困難にしている。 

著者の主張すべてに納得したわけではないし、一度読んだだけではよく分からない部分もある。しかし、著者の幅広い知見と拠って立つ視点にはとても興味を持たされた。

最初に見たときは「読み終わるんかい...」と少し気分が萎えたが、実際読み進めてみると、とてもおもしろい本であることがわかる。

右も左もどーんと来いである。...いやいやホントには来ないでね。 

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
 
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