[ま]背中をやさしくさすって @kun_maa
今年も人間ドックを受診してきた。
比較的大量に飲酒をする傾向にあるので、ここ数年は胃カメラでの検査をしている。
口から入れるのはきっと無理なので鼻からカメラを入れているのだけど、楽だと言われている鼻からの検査でさえ、バリウムに比べると涙が出るほど苦しい。
たとえ苦しくても映像で直接見えるというのは検査として格段の安心感があるから続けている。
検査中に医師が僕にも映像を見るように促しながらリアルタイムで説明をしてくれるから、見ようと思えば食道から胃を通って十二指腸までじっくりと自分の腹の中を観察することも可能だ。
医師にいろいろ話しかけられても、喉に管が通っている違和感で声出せないし、もう本当気持ちに余裕がなくてそれどころじゃないから、説明内容も全く頭に入ってこないけどさ。
人一倍緊張しいなので、今回も検査前の鼻への麻酔の段階ですでに吐き気に襲われてひとりえずき続ける情けない自分に震えながら検査を待つ時間が永遠に感じたね←ビビりすぎ...
実際に胃カメラを鼻から挿入されて検査が始まると麻酔が効いているとはいえ、さらに激しくおえぇぇぇえってなってしまうし上半身にめっちゃ力はいって余計に苦しい。
まさに苦しみの絶頂!
そんなときだ。
背中をやさしくさすって「大丈夫ですよ」って天使のような声が聞こえてきたのは。
じわーっと力が抜けて明らかに楽になった。
背中に感じる手のひらの温もり以上にさすられることに何の効果があるのだろうか、とても安心して気持ちが癒される。
やさしく背中をさする手は時々とんとんと授乳後の赤ちゃんのげっぷ出しのように軽やかにリズムを刻んだりもする。
ちょうど胃の中に空気を入れて膨らませているところにこのとんとんだ。
げっぷを我慢してくださいと医師に言われながらのやさしいとんとんだ。
これぞ快感と言わずして何が快感だろうか!
看護師さんに背中をさすられて、あるいはとんとんされて、幼い頃の想いが記憶の深い沼から掘り起こされていく。
すっかり忘れていたようなことや考えることをやめていたこと。
背中に染み込んでいたいろいろな記憶が溢れ出してくる。
僕は感極まって泣いてしまいそうになった...いや泣いていた。だって胃カメラが苦しくて涙出てたから。
なんだか甘く懐かしい感覚。
もうずっと胃カメラが続いてもいいからこのまま永遠に背中をやさしくさすっていてくださいって混濁した恍惚感。
もっと背中をとんとんしてほしかった。
生きることに疲れる日々の生活の中でやさしく背中をさすって大丈夫だよって言ってもらえたら大抵のことは乗り越えられるんじゃなかろうか。
手のひらで触れられて呼び起こされる安心感ハンパない。
手のひらパワーすっげーなって思った。
幼児プレイや赤ちゃんプレイに惹かれる人の気持ちがほんの少し分かったような気がしたハーイ!バブー!←
僕も人の背中をそっとさするような安心感と癒しをあたえられる立派なオトナになりたいものだ。
他人の背中を勝手にさすったら逮捕されるけどな。
あゝなんという抽象の純粋さと具体の卑俗さよ。
RSS登録していただける方はこちらのボタンをご利用ください。