1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われた心理実験を基につくられた映画。
実際の実験は、スタンフォード大学の地下室を模擬刑務所に改造し、新聞広告で集めた普通の人々を看守役と囚人役に分け、人間が特殊な役割を与えられると次第にその役割に合わせて行動してしまうことを証明しようとしたものである。
突然の解雇で職を失ったトラビス(エイドリアン・ブロディ)は、新聞広告で見かけた日給1000ドルという報酬に惹かれて14日間の実験に応募する。
同じく実験に応募した気だてのいい男バリス(フォレスト・ウィテカー)。
最終的に選考に残った24人の被験者は、看守役と囚人役に分けられ、24時間カメラの監視の基にそれぞれの役割を演じることとなる。
実験中にはそれぞれの役割にしたがって守らなければならない決まり事はあるが、暴力行為の禁止もそのひとつだ。
もし暴力行為があった場合は、実験は中止され、報酬も支払われない。
実験者に割り振られたそれぞれの役を淡々とこなせば、日給1000ドルがもらえる簡単な仕事と誰もが思っていたはずだ。
人は権力を持つ役割を与えられることで、普段は抑圧されている本性をあらわにするものなのだろうか。
この作品では、囚人役を演じることになったトラビス(エイドリアン・ブロディ)の抑えのきいた演技も捨て難いのだが、なんといっても見所は看守役を演じることになったバリス(フォレスト・ウィテカー)の豹変ぶり。
どこにでもいそうな気だてのいい普通の男が、看守役という権力に魅了され、次第に狂気をあらわにしていく様子は一見の価値がある。
そして、抑圧する側とされる側の緊張感はついに限度を超え決壊していく。
権力を持つ役割が、人格を飲み込み込んで崩壊させていく。そのとき露わになるのがその人間の本性だ。
それは、映画や心理実験の世界だけのことではない。
仕事上与えられた権限や役割を、自分自身と同一視して威張り散らす者など、僕らの世の中には掃いて捨てるほどいる。
実際のスタンフォード大学の実験は、倫理的な問題により2週間の予定が6日間で中止されたという。
この映画の結末はあえて語らない。
そして、この作品の一番の見所はフォレスト・ウィテカーの演じる狂気だ。
エクスペリメントは2010年公開のアメリカ映画。
現在、Huluで公開中。
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