[ま]子どもとの距離感つかめず今夜は月がきれい @kun_maa
昨年の春に地方の国立大学に通うことになって独り暮らしを始めた次男が家に帰ってきた。
年末年始にはバイトがあるからと言って帰ってこなかったので昨年の夏以来だろうか。
次男は繊細な性格で潔癖で神経質なところがある上に幼い頃の大事な時期に僕の身勝手で僕が家にいなかったりしたこともあって高校生になった頃から彼とはあまりうまくいってなかった。
たぶんそんなこともあって彼は早く家を出たいと言い出して大学受験は地方の国公立大学しか受験しなかったのだと思っている。
まあそんなことも面と向かって聞いたことはないのだけど。
すべては身から出た錆だと自覚して金は出すけど口は出さないってスタンスを貫いて彼が家を出て独り暮らしを始めるときも淡々と見送ったものだった。
年末年始に帰ってこないと聞いたときもまあそんなものだろうなと特に気にしなかった。
冬は雪が多い地方都市に住む彼のためにcrocsの福袋でブーツを買っておいたのを渡し損なっちゃったなとは思ったけれど。
そんな感じの決して良好ではない関係性で僕自身も割とドライに構えていたのだけどそう思っていたのだけど。
何の前触れもなく突然帰宅した次男に会ったらびっくりして変な声出ちゃったよ。
そして妙にはしゃいで渡し損なっていたブーツを持ち出しては押し付けたりして。
冷静になって面と向かうと何を言っていいのかわからなくなって言葉に詰まってしまうそういうところが嘆かわしさ。
そそくさと自分の部屋に逃げ帰ってひとりになってみるとあれも話したいなこんなことも聞いてみたいなって悶々としてなんだよ恋する乙女かよって自分でツッコミ入れたりして。
そうかと思えばまた遊ぶかもしれないからといつまでも手放せずにいたPS4のゲームソフトを彼に全部あげたりしてなんていうか行動に脈絡がなくておかしい。
遊ばなければ売り払って小遣いすればいいからさとか言っちゃってちょっとなに言ってるかわかんないし言いたいことはそんなことじゃないのにね。
幼い頃から新刊が出るたびに彼に買ってあげていたワンピースの単行本も彼が帰ってきたら渡そうと欠かさずに買い置きしていたくせに「読むか?」と別にどうでもいいんだけどと関心なさげを装って手渡ししてさ本当は読ませたくてしょうがないくせに。
それなのに二人きりになるとなんだか気まずくてそわそわしてしまうというなんなんだよまったく状態で自分に対して本当にダメなやつだなと落ち込んだ。
明朝帰るという話を聞いても話したかったことを言わなくちゃと気ばかり焦って結局なにも言い出せず同じ部屋にいるのに黙ってテレビを観ながらビールなんて飲んじゃって頭の中では言い出せずにいる言葉が渦を巻いているのになんとも情けない。
変なことを言ってこれ以上嫌われたくないとかどこかで思ってるんだよね。
そんな数日を過ごして次男とはロクに会話らしい会話もできないまま別れてしまった。
彼のいなくなった家というのは数日前と別に変わらないのになんだかぽっかりと穴があいてしまったような気持ちになってやっぱりまだ距離感がつかめない。
そんなわけで今夜は月がきれいですね。