楽しいであろう幻想に彩られた夏も終わって秋の気配。
秋といえば食欲に生きるか芸術に生きるか将又いつものとおり季節に関係なくビールに生きるのか。
ともすればもの悲しさすら覚える秋の夜長をせめて笑い飛ばして明るくしたい。
「カメラを止めるな」を観て映画で大笑いする楽しみを久しぶりに思い出した。
まずタイトルがいい。
この開き直った感じがたまらない。
作品自体も名前のとおりこれでもかってくらい様々な地獄を見せてくれる。
地獄が地獄を呼びぐっちゃぐちゃになった世界で必死に生きている姿からこそにじみ出る笑いってのがあるのだ。
いやいやおかしいだろって苦笑する者たちに対して俺たちにはこういう生き方しかできないんだ何が悪い!と開き直って喉元にナイフを突きつける感じとでも言おうか。
描かれている地獄は皆が皆自分の欲望や願望に正直に生きようと行動するところから生まれてくる。
そして皆が少しずつイかれて狂っているのだ。
彼らに巻き込まれていく人々は逆らいようもなく押し流されながら誰もがその狂気の中で輝きを放ちストーリーに花を添える。
作品を観たことのない人にはきっとなにを言っているのかわからないかもしれない。
「地獄でなぜ悪い」は一見するとリアリティに著しく欠けハチャメチャでストーリーが破綻しているように見える。
観ている者を置き去りにするかのようにやりたい放題むちゃくちゃしながら疾走していく展開に呆気にとられたら負けだ。
その流れに食らいつき笑いたいところで素直に心の底から笑えばいい。
そうしているうちにめちゃくちゃに見えていた話がひとつに集約されていく。
それは映画を撮らなければならないヤクザの物語であり。
たった1本の名を残す映画を撮ることができれば死んでもかまわないという夢にとり憑かれた自主制作映画監督の話であり。
元人気CM出演子役だった危険で魅惑的な女のストーリーであり。
その女に恋する情けない男やヤクザ者の人生だったりするのだ。
國村隼の気取った態度。
友近の威風堂々として腹の据わったブチ切れ方もたまらない。
長谷川博己は完全にイっちゃってるし。
星野源の情けなさときたらもうさすがとしか言いようがないし。
二階堂ふみに至ってはセクシーで弾ける魅力に溢れかえっているからもう惚れてしまいそうになってなんなら結婚してくださいって言いそうになる。
堤真一は硬軟使い分けて魅力的なやくざっぷりを魅せつけてくる。
本当に登場人物が魅力的だ。
べらぼうな量の血糊がぶちまけられ激しいチャンバラで手足が飛び散る。
なかなか死なない主人公たちにおいおいってなりながら銃弾撃ちすぎだろってくらいの銃撃戦に魅了される。
ブルース・リーもどきがオマージュ込めて飛び跳ねて。
警察官はアメリカかよってツッコミたくなるほどマシンガンをぶっ放す。
もうなんていうかエンターテイメント全部入りのおもしろさマシマシ映画なのだ。
つまらないことで悩んだり
秋だからといってセンチメンタルになるのがバカらしくなっていい感じに体の力が抜けて軽くなる。
そんな映画が「地獄でなぜ悪い」なので
どうか気分が落ち込む前に観るべし観るべし。
血しぶき系が苦手な人やバカらしい映画は認めない主義者の方にはおすすめできないけどね。