[ま]解錠師(スティーブ・ハミルトン 著)/とても切ないラブストーリー&ミステリー @kun_maa
解錠師(スティーブ・ハミルトン 著)は、かつて「このミステリーがすごい!」2013年版海外編で1位に選ばれた作品である。
そういう意味では有名な作品なのでご存知の方も多いかもしれない。
主人公のマイクルは8歳の時に巻き込まれたある事件がきっかけで、その事件以降ひと言も話すことができなくなってしまった。
でも彼は2つの人並みはずれた才能を持っていた。
ひとつは絵を描くこと。そしてもうひとつが解錠(鍵なしで錠を開けること)である。
「このミス」で1位に選ばれたくらいだからバリバリのミステリー作品だと思って読み始めた。でも、この作品は単なるミステリーの範疇に収まる作品ではない。
物語は刑務所に収監されて10年になろうとしている20代後半のマイクルが、どうして解錠師になったのか、そしてなぜ服役することになったのかを読者に打ち明けるように綴られていく。
そこでは、マイクルというひとりの青年がさまざまな経験をとおして成長してく様子、恋人となるアメリアとの出会いと彼女に対するまっすぐな想い、そして愛する者を守るために犯罪に手を染めていく様子などが生き生きと描かれている。
マイクルは最後までひと言もしゃべらない。
それにもかかわらず1人称による彼の内面の語りによって、等身大の姿がみずみずしく描きだされている。まるで彼が声を発しているかのように。
これはマイクルという孤独で繊細な少年が過酷な運命に翻弄されながら成長していく青春小説であり、言葉は交わさなくても絵によって結ばれるアメリアとの切ないラブストーリーである。
そして、マイクルの半生を2つの時間軸を交互に描くことで生み出される独特の緊張感、解錠シーンの何とも言えない臨場感、アクションシーンの鮮やかさ、マイクルの幼少時の事件の謎など、その全てが優れたミステリーであることも確かだ。
特にマイクルが最後の賭けに出たところの描写は緊張感、謎解きそして意外な結末と、ミステリー好きならば必読である。
物語の終わり方も希望に満ちていて爽やかな読了感。
こういう小説はとても好きだ。
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