[ま]鈴木ごっこ/秀逸なタイトルと巧妙に張られた伏線&どんでん返しにやられたーってなるミステリー @kun_maa
最初に言っときますが完全にタイトル買い。
だって「鈴木ごっこ」なんてちょっとほのぼのとした感じもあって、いかにもおもしろそうでしょ。実際おもしろいんだけど。
でも導入部分は全然ほのぼのとなんてしてないんだなあ。
よくわからない状況と、暗い感じの出だしから受けるタイトルの印象とは違う雰囲気に、ミステリー好きとしては期待が高まる高まる〜。
四月一日。
気が滅入るような小雨がシトシトと降り続く午後十一時、わたしは膝の上で両手を握り締めてじっと食卓を見つめていた。
それは美しい食卓だった。誰もが憧れるような。すべての家族が笑顔になるような。
インターホンが鳴った。とうとう、やってきた....。緊張でキリキリと胸が痛くなる。
夫の浮気が原因の借金2,500万円を帳消しにする代わりに、1年間見ず知らずの他人4人で「鈴木」という家族のふりをして生活をしろというスキンヘッドのヤクザからの奇妙な申し出を受けた主人公の「わたし」。
同じ申し出を受けて集められた他の3人の登場人物は全員男。
赤の他人が共通の目的のために共同生活をしていくうちに、なんとなく家族っぽくまとまっていく不思議な関係と和やかな雰囲気。それぞれを呼び合うための1年間の仮の名前のつけ方も絶妙だ。
そう、この作品は途中から、最初にタイトルから感じたほのぼのとした雰囲気を前面に醸し出してくるのだ。
借金が帳消しになる理由もわからないまま「鈴木ごっこ」を続ける登場人物と、スキンヘッドから与えられる別のミッション。
このミッションを成功させるためには4人が協力しなければならないし、失敗すれば借金の帳消しはなかったことになる。
ミッション成功のためにお互い協力しながら、次第に本物の家族のような関係性を育んでいく「鈴木ごっこ」のメンバーと、その果てに待つ1年後のどんでん返しとタネ明かし。
意外と平凡な借金返済の仕組みと、それだけでは終わらせない巧妙に張られた伏線がきれいに回収されるときに感じる無間地獄のようなやるせなさ。
まるで本物の家族のような関係に見えてきていた登場人物たちだけに、そこに隠されていた秘密とその伏線となる隠し方の巧妙さに思わず「ああ!やられたー!」ってなること間違いなし。
読んでいる時に自分が感じる違和感を大事にしておくと後でヒャッハーってなるよ。
後味は決してよくはないけど、ミステリーとしてはおもしろい。
そんな作品が「鈴木ごっこ」。どんでん返し好きな人には是非おすすめしたい。
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