[ま]映画「カッコーの巣の上で」/ジャック・ニコルソンの名演と人間の尊厳を扱った名作 @kun_maa
1975年(日本では1976年)公開のアメリカ映画。
いわゆる名作と呼ばれる作品のひとつに数えられ、第48回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞の主要5部門を独占したことでも知られている。
ジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーは、刑務所での強制労働を逃れるために精神異常を装って精神病院に収監される。
彼の精神病院への収監は、本当に精神異常なのかどうかを見極めるためのものであった。しかし、まったく精神異常の様子が見られないにもかかわらず、彼は刑務所に送り返されることも病院を出ることもできなくなる。
医師や看護師長の恣意的な判断によって「精神病者は作られる」のだ。それも悪意でなくもっともらしい善意をまとって。
そして、それは彼だけに当てはまるものではないことは容易に想像がつくだろう。
これでは実質的な「無期懲役」と同じである。
患者の人格や人権などはお構いなしに、自分たちが法律だと言わんばかりに病院内に君臨する看護師長や監視スタッフたち。
すべてが彼らの決めたスケジュールに従い、なんの薬かも説明されないまま強制的に投薬され、自由も制限されるという病院内では暗黙のルールに対して、外の世界からの視点で違和感を感じ、反抗するマクマーフィー。
傷害や強姦の犯罪者であるマクマーフィーがここでは一番人間らしく生きており、犯罪歴のない「精神病者」が人間としての生き方ができないという皮肉さ。
人間としての自由意思の尊重を当然のものとして要求し、自分たちの自由が恣意的に制限されていることになんの疑問も抱かない患者たちに苛立つマクマーフィー。
彼の自由奔放な行動に戸惑いながらも、次第に心を開いていく精神病棟の患者たち。
ジャック・ニコルソンの演技はさすがにすごいが、周囲を固める精神病患者役の共演者の迫真の演技も見ものである。
なんか見覚えのある顔だなあと思っていたら、ダニー・デヴィートだったり、クリストファー・ロイドだったりして驚いた。
病院から集団で脱走し、クルーザーを無理やり貸し切っての乱痴気騒ぎや、マクマーフィーの影響を受けて自分の意思に目覚めた患者たちの病院権力に対する反抗、挙げ句の果ては病院内に酒と女を連れ込んでのどんちゃん騒ぎ。
マクマーフィーによってもたらされるさまざまな経験を通して、次第に人間らしくなっていく患者たち。
しかし、その一方で行われる懲罰としての電気ショック療法やもっと恐ろしい治療法も...
閉鎖病棟という限られた空間のなかでの狭い人間関係が中心だが、人間としての当たり前の尊厳ある生き方に目覚めて、次第に生き生きとしていく多くの入院患者の姿に、正常と異常を分けているものは果たして本当に病気なのか、それとも人間を人間として扱わない態度なのかと考えさせられる。
タイトルにもなっているカッコー(cuckoo)には、「気が狂った」とか「間抜け野郎」という意味があるという。
気が狂った間抜け野郎たちが住む「カッコーの巣」に閉じ込められているのは、本当に気が狂った者たちなのだろうか。
それを決めている人々は本当に「正常」なのだろうか。
そして、その「カッコーの巣」を乗り越えて「精神異常者」という名の泥沼から飛び立つことはできるのか。
最後まで目が離せないストーリー展開にあっという間に時間は過ぎ、ジャック・ニコルソンの名演技に唸らされる。
ある意味衝撃のラストシーンでは、我々は人間の尊厳について重い問いかけを突きつけられることとなる。
やはりこれは名作と呼ぶにふさわしい。
ジャック・ニコルソンのファンはもちろん、ヒューマニズム作品好きな方や精神病院に興味関心のある方には、ぜひ一度は観てほしいおすすめの作品である。
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