[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相/あな恐ろしやモンスター・ペアレント @kun_maa

全国で初めて「教師によるいじめ」と市教委が認めた体罰事件。

それがこの「福岡殺人教師事件」である。

「早く死ね、自分で死ね。」2003年、全国で初めて「教師によるいじめ」と認定される体罰事件が起きた。地元の新聞報道をきっかけに、担当教諭は「史上最悪の殺人教師」と呼ばれ、停職処分になる。児童側はさらに民事裁判を起こし、舞台は法廷へ。正義の鉄槌が下るはずだったが、待ち受けていたのは予想だにしない展開と、驚愕の事実であった。 

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)

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当初、この小学校教師が該当児童に対して行ったとされた「いじめ」の内容は、とてもひどいものである。

家庭訪問で児童の曾祖父がアメリカ人だと知った教師は「血が穢れている」などの暴言を吐き、それから次のようないじめが始まる。

授業後の帰りの会で、この児童にだけ10秒で帰り仕度をすることを強要。それができないと自分が考え出した「5つの刑」の中からひとつを児童に選ばせて虐待を加えた。

この虐待で児童は鼻血まみれになったり、歯を折ったり、両耳が千切れて化膿したりという大怪我を負わされている。

この虐待に対して、親が抗議をし、一旦は収まったかに見えた児童へのいじめは、影で暴力を振るわれたり、「血が穢れているから生きている価値がない。ビルから飛び降りて死ね」といった自殺の強要へと姿を変えて続けられた。その結果、児童はPTSD(心的外傷)を引き起こし、登校できなくなったというものである。

まさに極悪非道の「殺人教師」である。

そして、朝日新聞週刊文春をはじめとするマスコミ各社が大々的に事件を取り上げて、「殺人教師」許すまじ!という雰囲気が形成されていく。

その結果、この教師に対して福岡市教委がとったのは停職6ヶ月という「免職」に次ぐ重い懲戒処分である。

 

しかし、その後に児童側が起こした民事訴訟において次々に虚言の数々が明らかにされていく。

児童の親が公言していた自身の経歴の詐称からはじまり、PTSDの診断自体の信用性の無さ、そして、裁判では最後まであったとされた体罰ですら、実際にはなかったと思われるという完全にでっちあげられた事件であることが明らかになっていく。

もちろん、この小学校教師に非がないかといえばそんなことはなく、優柔不断で物事をはっきりと主張せず、学校に波風を立てずに済むならばと、やってもいない体罰を認めてしまったところなどは正直あきれてしまう。

だが、だからといってその程度の過ちで重い懲戒処分を受けた上に、教師としての信用を全く失い、「殺人教師」のレッテルを貼られてさらし者になっていいわけがない。無実の罪で社会的に抹殺されていいわけがないのである。

この事件を引き起こしたものは、第一義的にはモンスター・ペアレントである児童の両親である。それは間違いない。どう考えてもおかしな人たちだ。

しかし、彼らを増長させ、これだけ大きな問題としてしまったのは、本来なら現場の教師の盾となるべき校長や市教委の弱腰と保護者に迎合する体質であり、ロクに事実確認もせずに大きな声を出しているものを安易に信用し、子どもは常に正しく、教師を悪者にしたがるマスコミであり、親の圧力に屈して正しい診断ができない医師であり、いわゆる人権派と呼ばれる弁護士たちの偏見に満ちた正義感である。

こいつらがよってたかって事実を捻じ曲げ、「殺人教師」をでっちあげたのだ。

事実が置いてきぼりにされ、長いものに巻かれて不実が形成されていく様子は、不気味さすら感じる。悪意ある集団を敵に回したときの個人の無力さに歯ぎしりをした。

本書を読むと、この事件はとても極端な事例に見えるかもしれない。

しかしそうではないのだ。

詳しいことは書けないが、僕は仕事上で同じような虚言癖をもった保護者と複数人関わりを持ったことがある。

一歩判断を誤っていれば、この事件と同じような事態に陥った可能性は否定できないし、マスコミの取材攻勢の怖さも身にしみてわかっている。

本書で取り上げている、福岡「殺人教師」事件のようなことは、事件の大小はあれど、どこででも起こりうることなのである。

だからこそ、本書はそんな馬鹿げた事件が起きないよう、冷静な視点を持ち得るために一読しておくべき本だと思うのだ。 

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)

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