[ま]人類が滅亡する6のシナリオ〜もはや空想ではない終焉の科学/最悪の可能性を描いた冷静すぎる一冊 @kun_maa
この刺激的なタイトル「人類が滅亡する6のシナリオ〜もはや空想ではない終焉の科学」と、まるで映画アルマゲドンのワンシーンのような表紙のイラストから、これはいたずらに危機感を煽るような、扇情的で過激なSFチックな内容の本だろうと思っていた。
しかし、読んでみるとすぐにわかるのだが、とても冷静な表現と、人類が抱えている問題点をわかりやすく炙り出している点でとても興味深い一冊である。
その書きぶりは、あまりにも冷静すぎて逆に恐くなるほどだ。恐怖心を誤魔化すためにも、いっそのこと煽って欲しいくらいだ。
著者も本書の中で述べているが、この本は決して未来を予想しているわけではない。
今後、最悪の場合にいったい何が起こるのかということを、様々な事例やデータを挙げながら述べているのである。
本書で挙げられている人類滅亡の要因は、スーパーウィルスの発生、生命の歴史が始まって以来繰り返されてきた大量絶滅、突然起こる気候変動、生態系の均衡の危機、バイオテロリズム、コンピューターの暴走の6つである。
本書に出てくるキーワードに"ティッピングポイント"というものがある。聞き慣れない言葉だが、次のような意味である。ここに出てくる「ラクダの背骨の話」はどこかで目にしたことがあるのではないだろうか。
ティッピングポイントとは、ゆっくりと予測可能な変化をしていたシステムが、突如、急激な予測外の変化を始める時点のことを言う。「すでに重い荷物を背負ったラクダは、ワラを一本載せただけで背骨が折れることがある」という話が昔からあるが、この背骨が折れる瞬間こそがティッピングポイントと言っていいだろう。(P.91)
実は気候変動を中心として、人類滅亡へとつながる6つのシナリオのさまざまな要因がすでにゆっくりと進行していて、いずれどこかで"ティッピングポイント"を向え、一気に滅亡へと突き進むということがあり得るのである。そう、最悪のシナリオではね。
本書を読むと、我々人類が抱えている危機の姿を捉えることができる。捉えただけで何か解決するのだろうか?もしかしたらそう思うかもしれない。しかし、迫っている危機の姿もわからずに、ただ漠然とした不安を抱えていても、それこそなにも変わらない。
大切なのは、何が我々にとって危機となりうるのかということを知ることから始まる。
人類の「敵」の姿を知らずして対策など立てようがないからだ。
ここに書かれていることは最悪のシナリオだというが、読み進めていくと、いつこのようなことが起こっても不思議ではないと思えてくる。
現在、ギニアやシェラレオネなど西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱、日本各地を襲うゲリラ豪雨、いたちごっこのコンピュータウィルスや一時期話題となった中国のバイドゥの日本語入力ソフトによる無断情報収集、減少するミツバチの謎などなど、ティッピングポイントへのカウントダウンはすでに始まっているのかもしれない。
本書に登場する人類滅亡の要因の多くは、主として科学技術の発展が地球にもたらす災厄である。
このことをもって、科学のこれ以上の発展に反対する立場をとる人々がいることも現実であり、科学技術が発展する前の自然に帰れと主張する人々も大勢いる。
しかし本書は、そのような考え方がいかに現実的ではないかということについてもしっかりと述べている。我々は科学技術の発展による恩恵を十分に受けているのである。
それを放棄することは、科学技術によって養うことができている人口の何割かを減らさなくてはならないということになる。そんなことが現実的であろうはずがない。
科学技術の発展が、もしかしたら人類を滅亡に導くことになるのかもしれない。
しかし、そうならないように対抗できるのもまた、科学技術の更なる発展でしかないということを鮮明に打ち出しているところに、本書の潔さと新鮮さを感じる。
そう、我々はもう後戻りはできないのである。
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