[ま]ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒/エリート臭にゲップが出る本 @kun_maa
ニーチェの言葉を引用しながら、なかなか過激に大衆社会批判を展開している本である。
さて、B層とはどんな人たちのことを指すのか。
「B層」という言葉自体は著者が作った言葉ではなく、2005年9月のいわゆる郵政選挙の際に内閣府が広告会社に作成させた企画書「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」による概念である。
「この企画書は、国民をA層、B層、C層、D層に分類し、『構造改革に肯定的でかつIQが低い層』『具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層』『主婦や老人、低学歴の若者』をB層と規定しています」(No.221から引用)
この表現だけでもなんだかカチンとくるが、著者の言葉を借りて言い直すと、B層とは「マスコミ報道に流されやすい『比較的』IQ(知能指数)が低い人たち」であり、「小泉郵政改革に熱狂し、民主党マニフェスト詐欺に騙され、流行のラーメン屋に行列をつくるような人たち」であり、「近代的諸価値を妄信するバカ」なのだそうだ。
そして、現代の世の中がおかしなことになっているのは、社会のB層化が急激に進んでいるからだという。
そのような社会では、商品の中心購買層、マスメディアにとって最大のタブーがB層にシフトして、B層に迎合した低レベルなコンテンツが社会を席巻するようになるため、そこで増幅されたB層エネルギーが社会全体を飲み込んでしまった状態になるのだそうだ。
我が国最大の権力者となったB層。それはスペインの哲学者オルテガが定義した「大衆」の最終的な姿である。
著者は本書を通して徹頭徹尾、常識、良識、歴史的感覚を失って暴走するB層の危険性、愚かしさを指摘するとともに、加えて民主主義とキリスト教的価値観をも全面的に否定し、その危険性といかがわしさを警告する。
よく読めば、著者の主張はわからないでもないが、その表現にはあまりにもエリート臭と「自分はそんなB層とは違うのだ」という選民思想がまとわりついていて、素直に「はい、そうですか」とは言い難い。
自分がB層かもしれないと素直に認めたくない気持ちにさせられることは間違いない。
著者は、B層の人間に対しては説得も教育も無意味だと言い切る。
では、なぜ本書は書かれたのか。
B層の人間に対する警告ではないのか。
B層の人間にはなにをしても無意味ならば、本書はいったい誰を対象に、何を目的に書かれたのか。
それは次の一文に端的に現れている。
「B層を説得、あるいは論破しても無駄です。われわれが行わなければならないのは、B層、B層政治家、B層知識人の生態と行動パターンを分析し、狂気の時代において正気を保つ努力を怠らず、来るべきカタストロフィに備えることだと思います」(No.323から引用)
そう、著者自身を含めた「B層ではない人たち」に向けて書かれた警告書なのだ。
そう思うと、この本から漂うイヤなエリート臭にも納得がいく。
そして、この鼻持ちならない感じ自体が、B層の反発をも計算に入れた販売戦略でもあるような気がしてならないところが「あー、はいはい。あなたは偉いですよ」って感じがしてしまうのである。
ここで紹介したのはあくまでも本書のほんの一部であり、実際に読んでみるとわかるけど、かなり過激な主張を展開している。
差別的と思われる表現も多々見受けられる。
読後感はお世辞にもよくないが、ちょっとした不愉快な刺激を求めて読んでみるのも一興という本である。
特に「あれ?もしかして自分ってB層かも?」って思った人にはおすすめ。
消化しきれないモヤモヤに腹が立ちすぎて、ゲップがでるほどの刺激を受けるだろう。
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