[ま]マザーズ (金原ひとみ 著)/男には永遠に共感できないかもしれない @kun_maa
母になるということは、男の僕には永遠にわからない。
そしてこの物語はあまりにも痛々しい。
作家のユカ、専業主婦の涼子、モデルの五月という3人の女性の視点で物語は描かれていく。共通点は3人とも1児の母親であるということ。
ユカはドラッグに溺れ、涼子は赤ん坊との2人だけの世界に疲れ切り、五月は夫との不和と自分の不倫に悩む。
全員がそれぞれの世界で悩み苦しみながら、母親であるという接点でつながっている。
それぞれの視点から見る相手の姿は、本人が感じている疎外感や孤独感とは無縁である。誰しも相手が自分が置かれた状況よりもよく見える。
隣の芝生は青く見えるってやつ?
同姓同士、母親同士ですらわかり合えない行き詰まり感。
全員が孤独だ。それはもう想像を絶するくらい。
子どもという絶対的な弱者を抱えながら、3人が3人ともどんどん追いつめられていく。
その様子は淡々と、そして凄まじい。
全員の物語があまりにも痛々しくて、男の僕には最後まで共感することはできなかった。
男が思い描く「母親像」をことごとく破壊してくれる作品である。
こうあるべきという安直な「母親像」は、この世界では微塵も感じられない。
1人の女性として、そして母親として思い悩み、苦しむ姿に母とはこうも孤独にならざるを得ないのかと震撼する。
ある者は子どもを失い、ある者は虐待への道を転がり落ちていき、ある者は狂気の世界に突き進んでいく。
誰もが必死に母になろうとし、母という役割を受け入れられず、母であることに恐怖する。
最後まで、哀しみとやり切れなさを感じさせられる作品である。
立場が違えば、この作品の感じ方も違うのだろうか。
女性が読めば共感できるのだろうか。
母親が読めば共感できるのだろうか。
たぶん、男には永遠にわからない苦しみなのかもしれない。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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